研究課題/領域番号 |
14J03319
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松浦 菜美子 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | フランス文学 / マラルメ / 詩 / 発話論 |
研究実績の概要 |
本研究は、19世紀フランス詩人ステファヌ・マラルメの、詩の成立現場についての考察と詩作品の関係を、「発話」という観点から統一的に説明する試みである。特に、マラルメにおいて重要な「非人称性」という詩の創作理念が、作品においてどのような文学的技法によって試みらているかを明らかにすることをその目的としている。 この目的に照らしたとき、本年度の研究成果として次の二つを挙げることができる。一つ目は、発話論の観点から詩を分析するための理論的前提を確立したことである。本研究の「発話」の定義はバンヴェニストのそれに依拠している。すなわち、「発話」とは「ラングの現動化」であるが、それは文学作品と他の言語実践の両者を含む。ただ、D・マングノーが指摘するように、文学作品が通常の言語活動と異なるのも事実で、それは、後者が発話状況を直接参照するのに対し、前者は発話状況をテクスト的に構築するところに認められる。この視点に立つと、発話者も同様にテクストの構築物と言える。本研究では詩における発話者を、小説の「語り手narrateur」と区別して「話し手parleur」と定義した。 本年度のもう一つの成果は、以上の理論的前提を踏まえ、「非人称性」の追求と文体の関係を具体的な作品分析を通じて明らかしたことである。本年度は特に、「非人称性」の創作理念が舞台論として展開していく1880年代前半に注目し、この時期に発表された詩を中心に分析を行なった。それにより、物語を解体しながら「話し手」を演劇的に書き記す文体的試みの中に作品の非人称化の契機があることを明らかにし、この結果を日本フランス語フランス文学会関西支部大会にて発表した。 以上の研究成果は、マラルメの重要な創作理念である「非人称性」について、文体レベルで論じる可能性を初めて拓いたという点で意義を持つものと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、目標としていた本研究の理論的基盤確立を達成することができた。さらにその上で、実際の作品分析から有益な結果を得られた点は期待以上であった。ただ、マラルメの批評的言説における詩の成立現場の考察を網羅的に調査・分析するという当初計画していたことが本年度中に完了しなかった。そのため、総合して(2)の評価が妥当と考える。
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今後の研究の推進方策 |
2015年度は前年度の成果を発展させ、マラルメの1880年代中葉~1890年代までの詩作品を中心に文体分析を行なう。この成果は、日本フランス語フランス文学会秋季大会にて口頭発表する予定である。 その一方で、当該年度は前年度の反省を踏まえ、マラルメの批評的言説の網羅的調査を行なう。具体的には、1860年代~晩年までの書簡・雑誌記事・批評集の中で「非人称性」に関わる言葉が出現する箇所を網羅的に特定し、思想的変遷とレベル別分類を行なう。この作業が終わったら、次に19世紀フランス詩および詩に関する言説の中で、どのようにして「非人称性」が芸術の理想として語られるようになったのか、思想的・文化史的背景を調査する。最後に両者を比較し、マラルメと時代背景の連続性および相違を明らかにする。この調査・分析の結果は論文にまとめ、紀要に発表したい。
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