研究課題/領域番号 |
14J03362
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
横手 康二 早稲田大学, 政治経済学術院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 協力ゲーム / シャープレイ値 / 単調性 / 割り当て市場 / 離散凸解析 / コア / 競争均衡 |
研究実績の概要 |
研究計画に従い、二つの研究を進めた。一つ目は、シャープレイ値の関連概念を単調性によって特徴づける研究である。二つ目は、割り当て市場の研究である。 一つ目の研究では、協力ゲーム理論の枠組みにおいて、単調性を用いた配分ルールの特徴づけを行った。単調性とは、一部の人々だけで達成できる利益が増えれば、その人々が最終的に受け取る利益も増えることを記述する公理である。単調性の公理は、公正な分配方法を分析する多くの研究分野で考察されてきた。本研究では、先行研究で導入された「弱単調性」と呼ばれる公理に注目した。この公理は、ある個人の貢献度が増え、かつ全体で達成できる利益も増えれば、その個人が受け取る利益も増えることを要請する。本研究では、弱単調性が協力ゲーム理論の背後にある準線形性の仮定と整合的ではないことを指摘した。そして、弱単調性を修正したいくつかの公理を導入し、それらによって解の特徴づけを行った。本研究の貢献として、先行研究の多くの解が単調性によって統一的に特徴づけられることを示したことが挙げられる。 二つ目の研究では、離散凸解析の手法を用いて割り当て市場を拡張した。割り当て市場とは、売り手と買い手が非分割財を取引する市場を分析するモデルである。売り手が複数種類・複数単位の財を生産する場合、費用関数の離散の凸性が重要な役割を持つ。先行研究では、分離凸性と呼ばれる仮定が課されていた。本研究では、分離凸性よりも弱いM凸性によって凸性を記述した。ここでM凸性とは、離散凸解析において導入された概念である。そして、売り手の費用関数がM凸性を満たす場合、競争均衡とコアが存在し一致することを証明した。本研究の貢献として、離散凸解析の経済学への新たな応用を提示したことが挙げられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は、26年度に引き続き二本の論文を執筆した。協力ゲーム理論の研究に加え、協力ゲーム理論の解を経済学の問題に応用する研究も行った。二本の論文はすでに査読付き雑誌に投稿済みであり、二本とも revise 中である。また、海外を含む五件の学会発表を行った。そのため、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、前年度までに引き続きシャープレイ値の関連概念の公理化を行う。より具体的には、先行研究で導入された balanced contribution property と呼ばれる公理を弱め、複数の解概念の統一的な特徴づけを行う。また、前年度までに蓄積した離散凸解析の知識を用いて、二部門市場の研究も継続する。 2016年の6、7月にはドイツの HHL Leipzig Graduate School of Management 及び ESMT European School of Management and Technology に滞在する。協力ゲーム理論の専門家の研究室を訪れ、研究課題を推進する。より具体的には、人々の間でネットワークが形成される状況での利得分配を考察する。また、ドイツやオランダで開かれる三つの国際学会に参加し、報告・討論を通じて研究を発展させる。
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