研究課題/領域番号 |
14J03393
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
土肥 侑也 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | 環状高分子 / アニオン重合 / 粘弾性 / 分岐高分子 / ダイナミクス |
研究実績の概要 |
環状高分子に多数の線状鎖がランダムに連結した「環状くし型高分子」の精密合成とその粘弾性挙動の調査を行った。試料はアニオン重合により、グラフト化のための反応点を約20点持つ環状ポリスチレン(分子量7万)を高純度に調製した後、そこに線状ポリスチレンをグラフト化する手法により、目的試料を合成した。グラフトする枝鎖には分子量2万、4万、8万の3種類を用い、試料を系統的に調製した。対照試料として、線状幹鎖(分子量7万)に同分子量、同本数の枝鎖をグラフト化した「線状くし型高分子」を同様の手法により合成した。得られた試料の分子特性は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)に多角度光散乱(MALS)検出器を取り付けたSEC-MALS測定により評価した。 得られた環状くし型試料の分子運動性を調べるために、動的粘弾性測定を行った。まず、枝鎖の短い線状および環状の両くし型試料では、枝鎖と幹鎖の緩和に由来した二段階の緩和を示すことが明らかとなった。特に、枝鎖由来の早い緩和は両者で類似しているのに対し、幹鎖由来の遅い緩和は、幹鎖の分子構造の違いを反映して、環状くし型鎖の方が線状くし型鎖よりも早いことが明らかになった。得られた粘弾性スペクトルに対して、非絡み合い鎖の運動様式を表わすラウズモデルを組み合わせて解析を行うことで、その挙動がよく記述できることが分かった。一方枝鎖の長い環状くし型試料では、幹鎖の寄与が極めて小さく、見かけ上枝鎖由来の緩和のみが観察された。対照となる線状くし型試料では、上記の枝鎖の短い試料と同じく、枝鎖と幹鎖の二段階の緩和が観察され、両者に明確な違いが見られた。以上より、くし型高分子の幹鎖構造の違いが、粘弾性緩和に明確な違いを与えることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の通り、環状くし型高分子試料を枝鎖の長さを変えて系統的に調製した後、その粘弾性挙動を調査し、線状くし型試料とは明確に異なる粘弾性挙動を示すことが明らかとなったことから、本研究課題がおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
線状鎖の両末端に環状鎖が連結した「ダンベル型高分子」をアニオン重合によって精密合成し、その粘弾性挙動を調査する。これにより、線状高分子の分子運動における末端の影響を詳細に検討する。
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