研究課題/領域番号 |
14J03404
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
白勢 洋平 九州大学, 理学府, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | リチウムペグマタイト / モンブラ石-アンブリゴ石 / 電気石 / 白雲母 / 透過型電子顕微鏡 / 交代変質作用 / 離溶 / 微細組織 |
研究実績の概要 |
希元素の濃集するLiペグマタイト中の主要なリチウム鉱物である、モンブラ石-アンブリゴ石について、化学分析とX線回折実験を行った。その結果、交代変質作用により多様なリン酸塩鉱物が内部に二次的に形成されていることがわかり、他産地の例とも合わせ、温度低下時の元素の挙動についての議論を行った。さらに、内包されるラクロワ石は他のリン酸塩鉱物と異なる組織を有することを見出し、形成過程が異なる可能性を提案した。そこで、これらの鉱物には初の試みとなる透過型電子顕微鏡を用いた微細組織観察を行うことで、ラクロワ石は熱水による変質ではなく、温度低下に伴う高温相からの離溶により形成されたことを明らかした。他産地の試料についてもラクロワ石の含有量を分析したところ、多くの産地のモンブラ石-アンブリゴ石中に普遍的に含まれていることがわかった。これらの結果には、従来の単純な変質による形成モデルとは異なり、結晶学的な要因に支配されたプロセスが反映されている。そして、ペグマタイト鉱物に対する微細組織観察の重要性を示す結果となった。 次に、変質したLi電気石及びカリ長石について、形成されている粘土鉱物の同定、微細組織観察およびX線回折実験によるポリタイプの決定を行った。詳細な研究例のないLi電気石の変質を初めて扱った研究であり、従来肉眼的な特徴からLi雲母に変質すると考えられていたものの、本研究の成果からLiを含まない白雲母が形成されることがわかった。形成された白雲母は積層の違いを表すポリタイプに差異があるため、形成環境にはわずかな違いがあり、それらの形成温度を推定することができた。また、その形成反応にはカリ長石の変質が大きく起因していると考えられる。本研究の成果から、新たに、Li電気石の変質により失われたリチウムの挙動といった新たな疑問点も浮かび上がり、これらの反応の普遍性を明らかにすることも今後の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,Liペグマタイトから産する鉱物に対して、従来行われてこなかった透過型電子顕微鏡などを用いた微細組織観察からその形成過程を探っていくことが特色である。今年度では、目標としていた燐酸塩鉱物や電気石の微細組織観察を行うことができ、その結果、燐酸塩鉱物の新たな形成過程を提案することができた。また、電気石の変質組織からは従来の見解とは異なる結果が導かれ、粘土鉱物の形成過程や熱水環境下でのリチウムの振る舞いなど、新たに考察すべき課題が見つかった。これらの成果から、本研究における手法の有効性が実証され、ペグマタイト形成過程に関する議論の発展への貢献が認められるため、おおむね順調であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
(1) Li電気石及び長石の変質作用によって形成される微細組織について引き続き分析を行い、その変質過程を明らかにする。特に、低温で生成されるスメクタイト中にリチウムが含有されているかを明らかにすることで、ペグマタイト中でのリチウムの挙動に関してさらなる知見が得られることが期待される。また、他の産地においてもこれらの変質作用が起こりうるかを議論していく。 (2) 長垂ペグマタイトに産する電気石、雲母、長石、ニオブタンタル鉱物、燐酸塩鉱物などの共生関係や、その組成的な特徴から、Liペグマタイトの形成過程について議論を行う。特に着目する点として、F、B、P、H2Oなどの花崗岩メルトに対してフラックスとしてはたらく成分と、希元素の濃集過程について、鉱物組み合わせの変化や鉱物中の化学組成の変化をもとに関連性を明らかにする。 (3) 福岡県長垂のLiペグマタイトだけではなく、長垂と同様に西南日本内帯に位置する茨城県妙見山、岩手県崎浜、西南日本外帯に位置する宮崎県大崩山、新たに見出した鹿児島県高隈山花崗岩中のペグマタイトについても野外調査と鉱物的特徴の記載を行い、花崗岩の岩石学的な特徴にも着目した成因論的な研究を行う。そして、これらの大陸縁辺部、島弧中の形成年代の新しいペグマタイトと海外のペグマタイトについて比較を行う。特に、鉱物単位ではペグマタイトの代表的な構成鉱物である電気石について化学組成の変化や微細組織観察から比較を行う。また、本研究の成果でもあるモンブラ石-アンブリゴ石中のラクロワ石の含有量、微細組織の特徴を用いることで、その形成環境を定量的に議論できるようモデルを確立する。
また、これらの結果をまとめ、学会発表、論文投稿にて成果報告する。
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