希元素鉱物を多く含むLiペグマタイトの産地である長垂ペグマタイトについて、鉱物の共生関係、鉱物学的性質をもとに岩体ごとの発展の傾向に対する総括的な議論を行った。 また、Liペグマタイトの主要な燐酸塩鉱物であるモンブラ石-アンブリゴ石について、産状の異なる複数の産地の試料を用いて、化学分析、X線回折実験、透過型電子顕微鏡を用いた微細組織観察を行った。その結果、低温で形成されたものではラメラ相や集片双晶を含まないことがわかり、高温で形成されたものでは温度に応じてラメラ相の含有量が異なることがわかった。これらの結果をまとめ、新たにモンブラ石-アンブリゴ石中の離溶による微細組織の形成モデルと形成条件を導き出した。モンブラ石-アンブリゴ石の微細組織を調べることで形成条件の議論が可能であることを示唆する結果である。 次に、これまで詳細な研究報告例のないLiペグマタイト中の変質組織について、化学分析、X線回折実験、透過型電子顕微鏡を用いた微細組織観察を行い、その変質メカニズムを明らかにした。長垂LiペグマタイトにおいてLi緑泥石化作用、セリサイト化作用、スメクタイト化作用が生じていることを明らかにし、その温度、活動度条件を推定した。Liペグマタイトの特徴であるLi、Bなどの元素は最終的に流体と共に岩体の外へ放出されるが、Liの一部はマンガン酸化物としてペグマタイト内部にも沈殿することが新たにわかった。晶洞のないLiペグマタイトの形成末期には、Liを含む熱水流体がメルトより離溶したのち、熱水流体自身の組成を変化させながら多様な粘土鉱物を形成することが明らかになった。また、水/岩石比や浸透率の影響を強く受け局所的な反応となりやすい。 野外調査においては西南日本外帯の高隈山花崗岩体から新たに見出された希元素ペグマタイト及び、崎浜Liペグマタイトについて観察を行い、その産状の記載を行った。
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