ポリ尿素薄膜の結晶性向上が焦電性や圧電性向上につながるという知見を活かし、ポリ尿素薄膜の高結晶化・高配向化を目的とし研究を遂行した。短い脂肪族鎖材料への変更において、昨年材料より融点の増加や力学強度の向上が確認できた。自発分極量の向上も期待されたが圧焦電性としては向上しなかったため、熱処理と同時に電場印加することで分極処理を行った。しかしながら、構造評価の結果は配向性や結晶性に大きな変化は見られなかった。一方で、圧焦電性の温度耐久性は大幅な向上がみられ、化学構造と熱物性に関する相関を明らかにすることで耐熱性に優れたポリ尿素材料の優位性を示す結果が得られた。 分子量を調整した尿素オリゴマーを用いた場合では、耐熱性が高分子体と同程度にもかかわらず高分子体では不可能な真空蒸着法による薄膜作製が可能であることが分かった。真空蒸着法を用いることで、基板に対して垂直配向かつ、非常に高結晶・高強度を有する尿素オリゴマー薄膜の作製に成功している。電気特性においては赤外線センサ応用で有利に働く低誘電率を示し、センサ応用以外の幅広い応用に向けた知見が得られている。 本年度の目的であったセンサ応用に関しては上記薄膜作製が難航したため研究の一部を変更し、焦電センサ以外の圧電型圧力センサに関する知見を一般的な材料を用いて得ることとした。従来の単純な素子構造から、3層からなる最適構造を提案することで多軸圧力検知に向けた知見を得ることができ、この結果は広く学術講演会でも認められている。 研究成果は、ポリ尿素の異なる脂肪族鎖材料、高結晶な尿素オリゴマー薄膜、圧電センサの多軸方向検知、と各成果を段階的に学術論文や学会発表を通して報告した。また成果の一部を書籍として発刊することで、より幅広く研究成果に関する情報発信を行った。
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