当初,本研究課題によりLDHをベースとした可視光応答型の光触媒系を構築することを目標としていた。電気化学的な手法によりLDHに生じる励起電子が持つポテンシャル位置を推定し、LDHの層間に保持する増感剤分子との組み合わせを検討した。しかし、LDHのエネルギー位置の制御、増感剤からLDHへの電子注入の二点について大きな困難があり、紫外光照射下で駆動する光触媒系の構築にとどまっており、可視光応答化は達成されなかった。LDHの電気化学的性質についてはこれまでに検討された例がほとんど無く不明な部分が多くため、種々のLDHの電気化学的性質を検討した。FTO基板上に電気泳動法により固定したNi-Al LDH電極に光照射を行ったところ,アノード分極領域でアノード光電流を示し,光アノード極として機能した.カソード分極領域ではカソード暗電流を示したことから,Ni-Al LDHはn型の特性を持つと考えられる.また,Ni-Al LDH電極を回路に組み込んだインピーダンス測定からフラットバンド電位を推定したところ,-0.40V vs. NHE (pH = 0) であった.つまり,光照射によってNi-Al LDHに生じた励起電子がCO2を還元可能なポテンシャルを有していることが示唆された.さらに,LDHを構成する2価と3価の金属イオンの種類を変化させた場合の,フラットバンド電位および光電流の大きさの違いについての知見を得た.その一方、電気化学測定の結果から大きなヒントを得て、H2Oを酸化できる酸化物光触媒とLDHとの複合光触媒を開発した。その一例であるMg-Al LDHとGa2O3を組み合わせた材料を光触媒として用いると、水中でのCO2の光還元に非常に高い活性を示すことを見出した。紫外光照射が必須ではあるものの、H2Oを還元剤として利用したCO2の光還元システムの構築に成功した。
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