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2015 年度 実績報告書

ジアザポルフィリンを光捕集系に用いた人工光合成系の構築

研究課題

研究課題/領域番号 14J03432
研究機関京都大学

研究代表者

山本 雅納  京都大学, 大学院工学研究科, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2014-04-25 – 2017-03-31
キーワード人工光合成 / 光電気化学 / 水分解 / 可視光 / 色素増感
研究実績の概要

現在人類が抱えているエネルギー問題を解決するには,無尽蔵の太陽エネルギーを有効利用する方法を確立する必要がある.この点,地球上に豊富に存在する水を電子源として水素などのクリーンな化学エネルギー貯蔵分子(燃料)を光エネルギーを用いて合成する人工光合成は有望である.しかしながら,一般に人工光合成系では水の酸化反応が速度論的に困難である.そこで,高効率な光電気化学的水分解系の構築が現在の課題である.太陽光は可視光を多く含むことから,可視光捕集能に優れた有機分子を光捕集系に用いた人工光合成が有望である.そこで本年度は,昨年度得られた知見を踏まえ,有機色素を光捕集系に用いた人工光合成の構築を検討した.
電極-分子層界面での電荷再結合は光電変換における効率低下の主な要因である.これを防ぐには,酸化チタン半導体(TiO2)表面に階層構造を分子レベルで構築することが欠かせない.分子触媒・有機色素・酸化チタン半導体の順に適切な配置がナノレベルで可能であれば,水→分子触媒→有機色素→TiO2という電子移動が実現すると考えた.そこで本研究では, 可視光捕集能に優れまた水を分解するのに十分高い酸化電位を有するポルフィリンと水分解触媒を共有結合で連結した分子を酸化チタン半導体上へ導入した.このような系を光アノードに用いた3極セルにより光電気化学的特性を評価したところ,最高18%のIPCEが可視光により実現した.
また, プッシュプル型サブポルフィリン(SP)および水分解触媒(RuWOC)をTiO2膜に共吸着させ,これを光アノードとして用いた3極セルを構築した.過渡吸収測定により一連の光誘起電子移動過程が確かめられるとともに,光電気化学的に発生した酸素をGCおよびGC-MSにより定量できた.これらより,可視光捕集,多段階電子移動,および引き続く水の酸化分解が確認できた.今後さらなる高効率化が期待される.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

電極-分子層界面での電荷再結合は光電変換における効率低下の主な要因である.これを防ぐには,酸化チタン半導体(TiO2)表面に階層構造を分子レベルで構築することが欠かせない.分子触媒・有機色素・TiO2の順に適切な配置がナノレベルで可能であれば,水→分子触媒→有機色素→TiO2という電子移動が実現すると考えた.そこで本研究では, 可視光捕集能に優れ,また水を分解するのに十分高い酸化電位を有するポルフィリンを光捕集系分子に用い,また低い触媒開始電位と高い触媒回転数が報告されているルテニウム系分子触媒を水分解触媒として選択し,これらを共有結合で連結した上でTiO2上へ導入した.このような系を光アノードに用いた3極セルにより光電気化学的特性を評価したところ,最高18%のIPCEが可視光により実現した.光電変換の波長依存性より,可視光捕集能のよりすぐれた色素を用いるとともにTiO2の膜厚を薄くすることで再結合を更に抑制することが好ましいことがわかった.また,水系界面での有機色素の酸化電位の低下が課題として浮上した.

また,環縮小ポルフィリンの1つであるサブポルフィリン(SP)を有機分子増感剤に用いた人工光合成の構築を検討した.SPと水分解触媒(RuWOC)をFTO基板上のTiO2膜に共吸着させ,これを光アノードとして用いた3極セルを構築した.これを用いてIPCEを測定したところ,SPのみを吸着させたときと比較して有意な差が見られた.過渡吸収測定により一連の光誘起電子移動過程が確かめられるとともに,発生した酸素がGCにより定量できた.これらより,可視光捕集,多段階電子移動,および引き続く水の酸化分解が進行していることが確認できた.このように,可視光捕集能をを有するプッシュプル型有機光増感剤を用いることで,600 nmまでの可視光を利用した水の酸化を実現した.

今後の研究の推進方策

以上に示すように, 有機色素を用いた可視光駆動の水分解が実証できた. しかしながら, フェムト秒レーザー過渡吸収分光法を本系に適用することで水系界面での再結合が依然として課題であることが明らかになった. また, 2,2’-bipyridine-6,6’-dicarboxylic acidを配位子に用いたルテニウム触媒は界面では触媒活性が抑制されていることから, より高い活性を有する分子触媒の開発が好ましいと結論付けた. そこで現在は, 本年度得られた知見を踏まえ, 界面再結合の抑制ならびに高活性分子触媒の開発を検討している.

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2016 2015 その他

すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (3件)

  • [国際共同研究] 王立工科大学/ルンド大学/ウプサラ大学(スウェーデン)

    • 国名
      スウェーデン
    • 外国機関名
      王立工科大学/ルンド大学/ウプサラ大学
  • [国際共同研究] タンペレ工科大学(フィンランド)

    • 国名
      フィンランド
    • 外国機関名
      タンペレ工科大学
  • [国際共同研究] オックスフォード大学(英国)

    • 国名
      英国
    • 外国機関名
      オックスフォード大学
  • [雑誌論文] Visible Light-Driven Water Oxidation by Covalently-Linked Molecular Catalyst-Sensitizer Dyad Assembled on TiO2 Electrode2016

    • 著者名/発表者名
      Masanori Yamamoto, Lei Wang, Fusheng Li, Takashi Fukushima, Koji Tanaka, Licheng Sun, and Hiroshi Imahori
    • 雑誌名

      Chemical Science

      巻: 7 ページ: 1430-1439

    • DOI

      10.1039/C5SC03669K

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Probing the Dipolar Coupling in a Heterospin Endohedral Fullerene-Phthalocyanine Dyad2016

    • 著者名/発表者名
      Shen Zhou, Masanori Yamamoto, G. Andrew D. Briggs, Hiroshi Imahori, and Kyriakos Porfyrakis
    • 雑誌名

      Journal of the American Chemical Society

      巻: 138 ページ: 1313-1318

    • DOI

      10.1021/jacs.5b11641

    • 査読あり / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Remarkable Dependence of the Final Charge Separation Efficiency on the Donor-Acceptor Interaction in Photoinduced Electron Transfer2016

    • 著者名/発表者名
      Tomohiro Higashino, Tomoki Yamada, Masanori Yamamoto, Akihiro Furube, Nikolai V. Tkachenko, Taku Miura, Yasuhiro Kobori, Ryota Jono, Koichi Yamashita, and Hiroshi Imahori
    • 雑誌名

      Angewandte Chemie International Edition

      巻: 55 ページ: 629-633

    • DOI

      10.1002/anie.201509067

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [学会発表] プッシュプル型有機色素を光捕集系に用いた光電気化学的水分解2016

    • 著者名/発表者名
      西澤 佑介・山本 雅納・今堀 博
    • 学会等名
      日本化学会第96回年会
    • 発表場所
      同志社大学京田辺キャンパス (京都府京田辺市)
    • 年月日
      2016-03-25
  • [学会発表] Visible-Light-Driven Water Oxidation by Ruthenium-Based Molecular Catalyst-Porphyrin-Fullerene-Linked Pentad2016

    • 著者名/発表者名
      Masanori Yamamoto, Hiroshi Imahori
    • 学会等名
      日本化学会第96回年会
    • 発表場所
      同志社大学京田辺キャンパス (京都府京田辺市)
    • 年月日
      2016-03-25
  • [学会発表] ルテニウム水分解触媒-ポルフィリン色素連結分子による可視光駆動水分解2015

    • 著者名/発表者名
      山本 雅納・今堀 博
    • 学会等名
      第27回配位化合物の光化学討論会
    • 発表場所
      佐渡インフォメーションセンター(新潟県佐渡市)
    • 年月日
      2015-08-07

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公開日: 2016-12-27   更新日: 2022-02-07  

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