研究課題/領域番号 |
14J03449
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研究機関 | 創価大学 |
研究代表者 |
水林 啓子 創価大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | 有色溶存態有機物(CDOM) / 光学特性 / アジアモンスーン / 季節変動 / サンゴ礁生態系 / 紫外線放射(UVR) / 熱帯 |
研究実績の概要 |
熱帯のサンゴ礁は一年中強い紫外線ストレスに暴露され、水柱において紫外線を吸収する物質として、有色溶存態有機物(CDOM)が知られている。熱帯マレーシアのサンゴ礁海域におけるCDOMの光学特性は、非モンスーン季節とモンスーン季節の間で顕著に異なることがわかってきた。本申請研究は、光化学特性(吸光特性、蛍光特性、脂肪酸組成など)と光生物学特性(CDOMに対する光とバクテリアの応答)の2つの観点に分けて、非モンスーン季節とモンスーン季節のCDOMの光学特性を明らかにすることを目的としている。平成26年度は、非モンスーン季節(10・2月)とモンスーン季節(12・1月)において、マレーシアで現場観測と培養実験を行った。現場観測では、本土の河口域から約10 km離れたBidong島の間に7地点設け、表層・中層・底層の3深度からCDOM試料を採取し、各季節の空間的なCDOMの分布を明らかにした。CDOMの光化学特性は、吸光度・蛍光強度・有機物組成の3つの手法により明らかにした。現場観測の結果、Bidong島のサンゴ礁周辺海域のCDOMは、本土の陸水由来のCDOMの影響をほとんど受けていないことが明らかとなった。しかし、モンスーン季節後に植物プランクトン由来と知られるProtein-like substanceが同海域において顕著に増加した。その理由として、陸から供給された有機物や、植物プランクトンの成長を促進すると知られる腐植物質が、海洋で速やかに光分解され、無機化することで、生物生産へ物質の循環が促進されたと考えられた。培養実験では、海水・陸水・サンゴ粘液を用い、【バクテリアのみ(暗所)】と【バクテリア+自然光】の2条件の培養を行い、それぞれの基質におけるCDOMの増加と減少を調べた。培養実験の結果、季節によってCDOMの光生物応答が異なることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に若干の変更があったが(現地調査の期間を延長することで、モンスーン季節と非モンスーン前後(Pre-・Post-)の3種類のCDOM試料を採取した)、当初の目的である非モンスーン季節とモンスーン季節のCDOMの光学特性の異なる試料を採取できた。得られたデータの分析・解析を現在行っている。
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今後の研究の推進方策 |
現場観測データの蛍光特性と脂肪酸組成の分析は、定性的な議論に加え、定量的な解析を行い、サンゴ礁海域におけるCDOM起源の各寄与を考察していく。また、培養実験については、CDOMの光生物応答がモンスーン季節によって異なることが明らかとなったため、すべてのデータを標準化した後に条件ごと比較し、CDOMの光生物特性を明らかにしていく。
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