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2014 年度 実績報告書

複合微生物系における膜の目詰まりの新奇生物学的制御

研究課題

研究課題/領域番号 14J03551
研究機関筑波大学

研究代表者

吉田 圭太朗  筑波大学, 生命環境科学研究科, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2014-04-25 – 2017-03-31
キーワードParacoccus denitrificans
研究実績の概要

世界の水不足を解決する手段として廃水の再利用が注目されており、そのキーテクノロジーとして水を高度に浄化できる膜ろ過技術の利用が期待されている。膜ろ過技術による再生水は我々の生活用水のみならず、農業・工業用水など多様な用途に利用でき、世界の一部地域では既に不可欠な水資源となっている。本技術の課題は、膜の目詰まりによる水処理コストの増加であり、従来の工学的制御には限界があった。
本研究では、微生物により目詰まりの原因物質(多糖類・タンパク質)を分解することで目詰まりを抑制することを目的とする。そのために、(1)廃水処理現場から多糖類・タンパク質を分解する細菌を分離し、(2)分解細菌の廃水処理プロセスへ導入する方法を検討する。具体的には、廃水処理現場で使用実績のあるビーズに細菌を固定する。最終的に廃水膜ろ過装置へ分解細菌を導入し、膜の目詰まりの抑制効果を評価することを計画している。
当該年度は、廃水処理現場の廃水から細菌の単離を行い、今後の解析に用いる細菌株の選定を行った。その結果、Aeromonas属細菌が多く得られたが、現場へ再投入することのハードルは高いと考えられた。そこで、当研究室でこれまでに別の実廃水から単離実績があり、代謝能力に優れたParacoccus denitrificansに着目して研究を行うこととした。現在の進捗では、P. denitrificansについて細菌の活性と細胞間コミュニケーションの関連の可能性を示唆する興味深い結果が得られている。これは細胞間コミュニケーションを人工的に制御することで廃水処理場の細菌の活性を制御できる可能性を示唆している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当該年度は、実廃水中に含まれる代謝能力に優れた細菌の探索とスクリーニングを行った。実廃水から様々な細菌を分離し、代謝能力に優れた分解細菌をスクリーニングするために、廃水処理場(茨城県かすみがうら市、霞ヶ浦浄化センター)から好気、無酸素条件で処理する活性汚泥を採取し、様々な培養条件下で細菌を分離した。系統解析の結果、分離株の多くはAeromonas属細菌であることが明らかとなった。しかし、Aeromonas属細菌では病原性を有する種が複数報告されているため、廃水処理現場へ再投入することは環境汚染と安全性の観点から困難と予想された。そこで、当研究室において別の実廃水から分離実績があるParacoccus属細菌に着目することとした。Paracoccus属細菌は多様な代謝能力を持つことが報告されており(Baker et al., 1998, Microbiol. Mol. Biol. Rev.)、廃水中においても高い代謝能力を示すことが期待できる。本研究では排水中の窒素除去にも寄与することが期待できる脱窒細菌Paracoccus denitrificansに着目して研究を行うこととした。次に、P. denitrificansの活性を生物学的な因子により制御することが可能であるかを検討するため、細胞間コミュニケーションシグナル物質を添加してP. denitrificansの活性を評価した。その結果、P. denitrificansの活性は細胞間コミュニケーションにより制御される可能性を示唆する結果が得られた。現在までの研究進捗として、今後の解析に用いる細菌株の選定を行い、細菌株の活性の測定を行ったことから、計画はおおむね順調に進展していると評価した。

今後の研究の推進方策

本研究課題では、微生物により目詰まりの原因物質を分解することで目詰まりを抑制することを目的とする。今後の研究推進方策として、高い代謝能力を有するP. denitrificansを廃水処理プロセスへ導入する方法を検討する。具体的には、廃水処理現場で使用実績のあるビーズに細菌を固定する。最終的に廃水膜ろ過装置へ分解細菌を導入し、膜の目詰まりの抑制効果を評価することを計画している。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] Impacts of hydrophilic colanic acid on bacterial attachment to microfiltration membranes and subsequent membrane biofouling2015

    • 著者名/発表者名
      Yoshida, K., Tashiro, Y., May, T. and Okabe, S.
    • 雑誌名

      Water Research

      巻: 76 ページ: 33, 42

    • DOI

      10.1016/j.watres.2015.02.045

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 非運動性グラム陰性細菌によるバイオフィルム形成機構の解析2015

    • 著者名/発表者名
      吉田圭太朗、豊福雅典、野村暢彦
    • 学会等名
      日本農芸化学会2015年度大会
    • 発表場所
      岡山大学津島キャンパス( 岡山県岡山市)
    • 年月日
      2015-03-26 – 2015-03-29
  • [学会発表] 微生物細胞間コミュニケーションがChromobacterium violaceumの脱窒に及ぼす影響2014

    • 著者名/発表者名
      吉田圭太朗、豊福雅典、野村暢彦
    • 学会等名
      環境微生物系学会合同大会2014
    • 発表場所
      アクトシティ浜松コングレスセンター( 静岡県浜松市)
    • 年月日
      2014-10-21 – 2014-10-24
  • [学会発表] 非運動性グラム陰性脱窒細菌におけるバイオフィルム形成の制御因子の探索2014

    • 著者名/発表者名
      吉田圭太朗、豊福雅典、野村暢彦
    • 学会等名
      第66回日本生物工学会大会
    • 発表場所
      札幌コンベンションセンター( 北海道札幌市)
    • 年月日
      2014-09-09 – 2014-09-11
  • [学会発表] How does a non-motile Gram-negative bacterium form biofilms?2014

    • 著者名/発表者名
      Yoshida, K., Toyofuku, M. and Nomura, N.
    • 学会等名
      15th International Symposium on Microbial Ecology
    • 発表場所
      COEX Convention Center (Seoul, South Korea)
    • 年月日
      2014-08-24 – 2014-08-29

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公開日: 2016-06-01  

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