世界の水不足を解決する手段として廃水の再利用が注目されており、そのキーテクノロジーとして廃水を高度に浄化できる膜ろ過技術の利用が期待されている。本技術の課題は、膜の目詰まりによる水処理コストの増加であり、従来の工学的制御には限界があった。本研究では、微生物により膜の目詰まりの原因物質を分解することで目詰まりを抑制することを目指す。前年度までに実廃水から単離実績があり、代謝能力に優れた脱窒細菌Paracoccus denitrificansを選定した。平成27年度はP. denitrificansを廃水処理プロセスへ導入する際に重要となるP. denitrificansの付着因子の解析を行った。その結果、細胞表層の疎水性タンパク質がP. denitrificansの付着に必要であることが明らかとなった。また、Paracoccus屬細菌を実際の廃水に添加して、廃水中の窒素の除去能を測定した結果、特定の現場の廃水に対してのみParacoccus屬細菌を添加することで元々廃水が有する活性+Paracoccus屬細菌の活性以上の窒素除去性能が見られた。この結果から、詳細な機構は不明だがParacoccus屬細菌が廃水中の特定の細菌に影響を及ぼすことで廃水中に存在した細菌の活性を向上させたと考えられ、廃水に導入する細菌と汚泥の組合せが廃水の浄化に重要である可能性が示唆された。
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