研究実績の概要 |
新規糖尿病治療薬として注目されているDPP-4阻害薬が糖尿病性腎症モデルにおいて血糖降下作用とは独立した機序で腎保護作用を示す可能性が報告されている。しかしながら非糖尿病性腎症モデルにおける報告はほとんんどない。以前は糸球体傷害が慢性腎臓病の進展に重要だと考えられてきたが、最近では尿細管間質の線維化、それに伴う間質の慢性低酸素が腎機能の低下とより強く関連することが明らかとなっている。そこで申請者はDPP-4阻害薬の腎線維化抑制効果や慢性低酸素に対する影響を調べる一環として、非糖尿病性腎炎モデル, ラットThy-1腎炎モデルを用いてDPP4阻害薬, alogliptinの腎保護効果について検討した。その結果、alogliptinはCD68陽性マクロファージの腎臓への浸潤を有意に抑制し、糸球体障害およびタンパク尿の改善傾向を示し、GLP-1受容体作動薬, exendin-4も同様にマクロファージ浸潤を有意に抑制した。興味深いことにこの時MCP-1およびRANTESなどのケモカイン遺伝子の発現に変化は認められなかった。さらに腹腔マクロファージを用いたex vivo細胞走化試験においてexendin-4がMCP-1誘導性マクロファージ浸潤を用量依存性に抑制し、この効果はalogliptinでは認められなかった。以上よりラットThy-1腎炎モデルにおいてDPP-4阻害薬はGLP-1依存性にマクロファージ浸潤を抑制することで、腎保護作用を示す可能性が示唆された。この研究成果はAmerican journal of Physiolosy Renal Physiologyに1月に採択された(Higashijima Y : Am J Physiol Renal Physiol. 2015)。
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