FRNAファージは水のウイルス汚染や水処理過程でのウイルス減衰効率を代表する指標微生物として有望視されている.FRNAファージはGIからGIVの4つの遺伝子型に分類されるが,それぞれ異なる特性を持つ.昨年度までに,FRNAファージについて,各遺伝子型を感染力ベースで定量的に検出する手法を確立し,これを環境試料に本手法を適用した.これらより,ノロウイルスの感染力推定においてFRNAファージの各遺伝子型が指標として有効であることが示唆された.本年度は下水処理場でのFRNAファージ各遺伝子型の減衰傾向を調べると共に,下水処理過程でのウイルス減衰メカニズム解明を試みた. 国内及びフランスにおいて,下水処理場の流入水試料,活性汚泥試料,処理放流水試料を収集した.各試料中のFRNAファージについて,各種法による定量を試みるとともに,ファージ株を単離し,活性汚泥への吸着特性を調べた. 感染力を保持したFRNAファージについて,流入下水試料においては,GII及びGIII型が優占的に検出される傾向にあり,処理下水試料においては,GI型が優占的に検出される傾向にあった.関連し,活性汚泥処理においてはGI型が特に減衰しにくい傾向にあった.FRNAファージ株144株を単離し,活性汚泥への吸着試験を行った結果,GI型が特に活性汚泥へ吸着しにくく,GIII型が吸着しやすい傾向が見られた.これらより,活性汚泥でのウイルス除去メカニズムについて,ウイルスの汚泥への吸着が影響していることが考えられた.同一遺伝子型内でも,株によって汚泥への吸着性に差異が見られた.ウイルスと粒子状物質への吸着には,表面電荷や疎水性など,ウイルスの表面特性が強く影響することが示唆されており,今後は単離したファージ株について表面特性を調べていくことで,ウイルスの下水処理過程での除去機構解明へ向けた考察が可能となると考えられる.
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