研究課題/領域番号 |
14J03676
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
巣山 晴菜 早稲田大学, 人間科学学術院, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | 非定型うつ病 / 拒絶に対する過敏性 |
研究実績の概要 |
非定型うつ病のリスクファクターとされている拒絶に対する過敏性に焦点を当てた心理療法の開発が求められているが(Parker, 2008),拒絶に対する過敏性がうつ症状に与える影響性については,実証的な研究は数少なく,介入の対象とされてこなかった。 そこで,本年度は,まず非定型うつ病患者を対象に縦断質問紙調査を行い,拒絶に対する過敏性がうつ症状の変化に影響を及ぼしているかどうかについて検討を行った。その結果,拒絶に対する過敏性は同時点,および6カ月のうつ症状の変化と関連することが示された。拒絶に対する過敏性の下位因子ごとに検討を行った結果,ある一時点におけるうつ症状は,他者から拒絶されることを恐れる認知と特に関連を示すが,その後のうつ症状の変化は,拒絶されることを避けるための行動を選択するかどうかによって変わってくる可能性が示された。つまり,拒絶に対する過敏性をパーソナリティ特性としてではなく,拒絶に対する過敏性を構成する認知や行動で詳細にとらえることで,重要な介入ターゲットとなる可能性が示唆された。 上記を踏まえて,次に拒絶に対する過敏性の基本的な特徴を明らかにするため,健常者を対象にサイバーボール課題(PC上で行う架空のキャッチボールゲーム)と質問紙から構成される実験を行い,拒絶に対する過敏性がコミュニケーション場面における認知にどのような影響を与えるかについて検討を行った。その結果,拒絶に対する過敏性が高い者はボールが回ってくる割合(予期),およびボールが回ってきた割合(知覚)を低く見積もり,実際にボールが回った割合との差が大きいことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度末までに研究3までが終了した。本年度は研究4,およびプログラムの立案を行う予定である。 本年度の研究においては,非定型うつ病患者を対象として,拒絶に対する過敏性の各特徴がうつ症状の中長期的な変化を予測するかどうかについて検討を行った。その結果,認知的特徴,行動的特徴がそれぞれ同時点のうつ症状,うつ症状の6カ月後の悪化を予測することを明らかにした。このことから,まず認知的特徴に着目して健常者を対象とした実験を実施し,拒絶に対する過敏性の高さがある特定の対人場面においてどのような認知を有するかについて検討を行った。その結果,拒絶に対する過敏性の高い者は,対人場面において「拒絶・批判をされるだろう」といったネガティブな予期を有することでそのようなサインを知覚しやすくなることを示唆した。来年度は行動的特徴に焦点を当て,実験を行う予定である。以上の点から,研究はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
研究4 拒絶を阻止する行動の維持要因の検討 手続き: 親しい友人同士の会話場面を録画する。受容条件では互いの長所,拒絶条件では互いの短所を会話テーマとし,会話中の行動評定を行う。実験前に質問紙にて①拒絶過敏性尺度,②Profile of Mood States,③Beck Depression Inventory-II,④相手の友人との関係性 を測定し,各条件の全gおに質問紙にて①拒絶の予期・知覚(VAS),Profile of Mood Statesを測定する。拒絶過敏性の高い者において,拒絶条件での行動変化が大きく,気分の変化との関連が認められれば,拒絶過敏性の行動的側面への介入の効果が期待できる。 対象者:健常者
研究5 拒絶過敏性に焦点を当てた介入プログラムの検討 研究1-4で得られた知見を基に,非定型うつ病にみられる拒絶過敏性に有効な認知行動的介入法法を介入し,個別介入を実施し,効果検討を行う。介入の前後に質問紙にて①BDI-II.②拒絶過敏性尺度,③Environmental Reward Observation Scaleを測定するとともに,面接にてHAM-Dを実施する。対象者はDSM-Vの大うつ病性障害非定型の特徴を伴うものの診断を満たした者とする。
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