本研究では「神経障害性疼痛」の発症原因因子として考えられているP2X4受容体の立体構造を基盤とした「疼痛」抑制分子の探索および構造解析による抑制機構の解明を目的として実験を行った。昨年度に得られた細胞に発現させたラット由来P2X4受容体の検出にも利用可能でイメージングに有効な機能的抗体の特徴付けを行うために抗原との共結晶の構造結晶解析を行おうとしたが良好な結晶は得られなかった。本抗体の結合力を上げin vivoで利用な抗体に改変するためには、抗原認識において重要なアミノ酸残基(ホットスポット)の同定が必要である。そこでホットスポット同定のために結晶構造解析から変異体解析へと切り替え特徴付けを行うこととした。抗体配列からモデル構造を構築し側鎖情報からホットスポット候補残基の絞込を行った。ホットスポット同定において全ての候補残基において従来法で変異体を調製するのは困難であったため、ファストスクリーニング法を開発することとした。発現させ可溶化させた抗体FabのH鎖L鎖を混合し、希釈法にてリフォールディングを行った。リフォールディング後の上清を用いてELISAを行い抗体変異体Fabの活性の有無を確認した結果、11残基が候補として残った。11種類の変異体について従来法により確認を行った。すなわち抗体FabのH鎖L鎖それぞれの粗精製を行い、段階透析法にてリフォールディングを行った。リフォールディング後HPLCにてFabを単離し、二次構造の確認を行いELISAにより濃度依存的な活性の変化を確認した。その結果、3残基がホットスポットであると同定できた。今後はこれらの残基の周辺に抗原と逆の電荷を導入することで結合速度を上昇させin vivoで利用可能な抗体Fabを調製していくことが可能であると考える。またヒトP2X4受容体認識抗体の作製も試みたが、不安定な抗原であったため獲得までには至らなかったが十分安定な抗原の獲得には成功した。
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