研究課題/領域番号 |
14J03735
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
細樅 侑貴穂 九州大学, 工学府, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 大腸菌 / バイオソープション / 希土類金属 / 細胞表層 / 化学修飾 |
研究実績の概要 |
バイオソープションは、従来の方法である溶媒抽出法より環境への負荷が小さいため、金属回収法の新たな方法として注目されている。特に大腸菌はそれ自身が無限に増殖する点、さらには細胞表面に様々な金属吸着選択性に関わる官能基を有していることから、環境負荷の小さいことも含めて次世代型の金属吸着剤としての応用が期待されている。また、吸着剤の合成が非常に容易であり、安価な吸着剤と成り得ることが期待されるため、産業界にもインパクトが大きいと思われる。しかし、現状、大腸菌をそのまま吸着剤として用いると、吸着量や吸着傾向がその細胞膜の組成に大きく依存する。そこで、本研究では、その吸着能力と選択性の向上を目指すことを目的とした。本年度は、大腸菌細胞膜上の官能基の化学修飾を行った。本研究では、最近溶媒抽出の新規抽出剤として注目されているジグリコールアミド酸型の配位子を大腸菌へ化学修飾することで、希土類金属に対して高い選択性を有するバイオ吸着剤の開発を試み、その金属吸着能を評価した。 その結果、未修飾の大腸菌を使用した場合、大腸菌の細胞膜の組成に基づいた吸着挙動が見られた一方で、化学修飾大腸菌を使用した場合、pH2~3における低いpH領域で希土類金属の吸着率が著しく増加することが分かった。このことから、大腸菌にジグリコールアミド酸骨格を修飾することにより、希土類金属の吸着挙動を制御可能なことが示された。さらに、化学修飾大腸菌の希土類金属の吸着量を確認し、未修飾大腸菌を用いた場合と比較したところ、最大で約2.5倍増加することが分かった。 以上のように、ジグリコールアミド酸骨格の化学修飾により、大腸菌の希土類金属への選択性およびその吸着容量を改善することに成功した。さらに、大腸菌表層を適切に設計することにより、吸着剤としての性能を制御可能であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の提案プランに従い、細胞表層に、希土類金属と特異的に相互作用する官能基を導入し、希土類金属をより高度に分離する新規吸着材の開発に成功した。具体的には、希土類に対する吸着能力と選択性の向上を目指すことを目的に、大腸菌細胞膜上の官能基の化学修飾を行った。本研究では、最近溶媒抽出の新規抽出剤として注目されているジグリコールアミド酸型の配位子を大腸菌へ化学修飾することで、希土類金属に対して高い選択性を有するバイオ吸着剤の開発を試み、その金属吸着能を評価した。その結果、ジグリコールアミド酸型の配位子を化学修飾した大腸菌を用いた場合、未修飾大腸菌と比べ、pH 2~3の領域における希土類の吸着率が著しく増加することが明らかとなった。この結果は、大腸菌に希土類金属に強い親和性を有する官能基を表面修飾することにより、希土類金属の吸着能力を増強できることを示すものであり、今後希土類金属の高度分離剤の開発に有用な知見を与えるものである。
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今後の研究の推進方策 |
ジグリコールアミド酸骨格の化学修飾により、大腸菌の希土類金属への選択性およびその吸着容量を改善することに成功した。さらに、大腸菌表層を適切に設計することにより、吸着剤としての性能を制御可能であることが示された。しかし、今回の化学修飾法において、反応条件が大腸菌細胞にとって厳しい条件であるため、最終的に得られる吸着剤の量が少量であることなどの問題点が生じた。そこで、今後は、例えば、目的金属に親和的な官能基に脂溶性分子を修飾し、脂溶性分子と細胞膜との相互作用を利用して、目的の官能基を大腸菌細胞にとって温和な条件で導入することにより、細胞表層設計に基づいた新規バイオ吸着剤の開発を検討していきたいと考えている。
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