研究課題/領域番号 |
14J03751
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
西 ちひろ 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | 死細胞貪食 |
研究実績の概要 |
生体内において、アポトーシス細胞はマクロファージなどの貪食細胞によって速やかに貪食される。その際、貪食細胞はアポトーシス細胞の細胞膜上に露出されるリン脂質、ホスファチジルセリン(PS)を特異的に認識し、貪食する。この機構により、貪食細胞はアポトーシス細胞を貪食するが、生細胞を貪食することはない。当研究室では、アポトーシス細胞のPSを認識し、貪食を促進する因子として、I型膜タンパク質であるTim4を同定した。Tim4は腹腔常在マクロファージのアポトーシス細胞の貪食において死細胞と強く結合するが、細胞内にシグナルを伝達しないことが知られている。つまり、Tim4で結合した死細胞を取り込む、貪食シグナル伝達因子が存在する事が想定されたが、その分子については不明であった。申請者は受容体型チロシンキナーゼであるMerが腹腔常在マクロファージに発現していることを明らかにした。そこで、MerとTim4、それぞれの遺伝子欠損マウスからの腹腔常在マクロファージの貪食能を解析したところ、いずれの遺伝子欠損マクロファージも貪食能を失っていた。また、当研究室で樹立した貪食再構築系により、Tim4を用いてアポトーシス細胞を結合させ、Merにより貪食シグナルを伝達することで、協調的に貪食を促進させている事が示唆された。さらに、死細胞貪食時の野生型とTim4遺伝子欠損腹腔常在マクロファージのチロシンリン酸化Merを比較すると、Tim4欠損腹腔常在マクロファージはMerのリン酸化が顕著に減弱していた。以上の結果より、腹腔常在マクロファージにおける死細胞の貪食では、Tim4とMerの両因子が必須であり、Tim4を用いてアポトーシス細胞を効率よく結合させ、Merの自己リン酸化を誘導することにより貪食シグナルを伝達し、協調的に貪食を促進させていることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MerとTim4の協調作用のメカニズムを明らかにするため、年次計画通りに研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの研究で、Merのリン酸化はTim4依存的に誘導されることを明らかにした。しかし、Tim4はその細胞内領域を欠損させても貪食能に影響を及ぼさないことが知られているため、Tim4は細胞内におけるシグナルを介してではなく、Merとの直接的な相互作用によってリン酸化を誘導させている可能性がある。そこで、Tim4とMerが死細胞貪食時に複合体を形成している可能性を検討する必要があると考えている。 Merのリン酸化から、貪食に至るまでのシグナル伝達経路の大部分は不明であり、Merの下流に位置するシグナル伝達因子の同定は、貪食シグナル伝達の分子メカニズムを知るうえで重要である。そこで、貪食時、リン酸化を引き起こしたMerと直接的に相互作用している因子を同定する予定である。
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