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2014 年度 実績報告書

[5]ヘリセンのらせんキラリティーを基盤とする多角的応用研究

研究課題

研究課題/領域番号 14J03777
研究機関九州大学

研究代表者

山本 耕介  九州大学, 薬学府, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2014-04-25 – 2016-03-31
キーワードヘリセン / 不斉合成 / 不斉反応 / 不斉配位子 / らせんキラリティー
研究実績の概要

本研究は、らせん状多環式芳香族化合物である[5]ヘリセン分子のらせん構造内部(1位)を官能基化した誘導体の合成、そのらせんキラリティーを活用した不斉反応開発、及び不斉分子認識ツールとしての応用研究を目的としている。以下に得られた結果を記す。
1. 7,8-ジヒドロ[5]ヘリセン骨格を基盤としたホスフィン配位子の合成
当初は[5]ヘリセン骨格を基盤としたホスフィン配位子の合成を計画していた。しかし、[5]ヘリセン型前駆体は光安定性が低いことが判明したため、7,8-ジヒドロ[5]ヘリセン骨格を基盤とした分子設計に修正した。これにより、光安定性が向上し、1位にリン原子を導入したジヒドロ[5]ヘリセン誘導体の合成に成功した。さらに、TADDOL誘導体を光学分割剤とすることで、対応するホスフィンオキシド体のエナンチオマー分離に成功し、続く光学活性ホスフィン体への還元も達成した。続いて、本化合物を不斉鈴木-宮浦カップリング反応の不斉配位子として適用した結果、最高で81% eeのビアリール体を与えた。この結果は、これまで用いることが困難であったヘリセン骨格の1位を不斉反応場として応用した最初の例である。
2. クマリン縮環型ヘリセンの不斉合成法開発
クマリン縮環型ヘリセン誘導体を用いた不斉分子認識を達成するためには、光学活性ヘリセン誘導体の合成が必要不可欠である。そのため、本化合物の不斉合成法開発を検討した。すなわち、クマリン骨格構築の際に不斉触媒を用いることで、基質である[5]ヘリセン誘導体の動的挙動を制御し、光学活性なクマリン縮環型ヘリセン誘導体が得られるものと推測した。実際に、(R)-xyl-BINAP金触媒を用いた環化異性化反応をクマリン骨格構築に適用する事で20%収率、83% eeにて生成物を得ることに成功した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

現段階において、当初の計画である[5]ヘリセン型ホスフィン分子の合成は達成していないが、1位への置換基導入に伴う物性変化に関する知見は、今後[5]ヘリセン骨格の応用研究を展開するにあたり、有益な情報であると考える。本年度は、この知見を分子設計にフィードバックすることで、らせん不斉を有する新たな光学活性ホスフィン配位子の合成に成功した。また、本配位子を鈴木-宮浦カップリング反応した結果、不斉配位子として機能する事を明らかとした。
クマリン縮環型ヘリセン誘導体に関しては、本年度の研究計画とは多少異なるものの、光学活性クマリン縮環型ヘリセンの合成に成功した。本成果により、種々の光学活性クマリン縮環型ヘリセン誘導体を簡便に合成することが可能になると期待できる。このため、分子認識ツールへの応用展開への迅速化が図れると考える。一方で、1-ヒドロキシ[5]ヘリセンの光学分割剤としての応用を計画していたが、上記の研究に対し重点を置いたため、本年度は特筆した成果を挙げる事は困難であった。しかし、本化合物については既に光学分割に成功しているため、今後迅速に遂行する事が可能だと考える。上記の理由から、おおむね順調に進行していると評価する。

今後の研究の推進方策

本年度の成果として、ジヒドロ[5]ヘリセン骨格を有するホスフィン配位子が不斉配位子として機能する事を見出した。今後、リン上置換基の異なる配位子群の創出を行い、鈴木―宮浦カップリング反応における基質適用範囲の精査、及び化学・不斉収率の向上を検討する。また、本配位子による不斉誘起メカニズムの解明を目的として、計算化学を用いたアプローチを行う。さらに、他の反応系への適用を行い、本配位子の有用性を検証する。ジヒドロ[5]ヘリセン骨格を起点として[5]ヘリセン型ホスフィン配位子の合成を検討し、その安定性を明らかとする。その後、不斉反応への適用を行い、ジヒドロ体用いた場合の結果との比較から、骨格の違いが反応系に与える影響の解明を目指す。
クマリン縮環型ヘリセンに関しては、不斉合成法の開発に成功したものの、低収率である問題が残されている。反応条件を精査する事で、収率及びエナンチオマー過剰率の向上を目指す。また、本手法を他のクマリン縮環型ヘリセン誘導体合成に適用し、光学活性ヘリセン誘導体ライブラリーの拡充、及び不斉分子認識ツールとしての応用研究を推進していく。光学分割に成功している1-ヒドロキシ[5]ヘリセンの、光学分割剤としての応用研究を引き続き検討していく。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2015 2014 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] 10,10'-Dimethoxy-9,9'-biazuleno[2,1-c]phenanthrene2015

    • 著者名/発表者名
      Kosuke Yamamoto, Ryota Nakamae, Hiroshi Suemune, Kazuteru Usui
    • 雑誌名

      Molbank

      巻: 2015 ページ: -

    • DOI

      10.3390/M843

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Synthesis of Substituted Azulenes via Pt(II)-Catalyzed Ring-Expanding Cycloisomerization2014

    • 著者名/発表者名
      Kazuteru Usui, Kensuke Tanoue, Kosuke Yamamoto, Takashi Shimizu, Hiroshi Suemune
    • 雑誌名

      Organic Letters

      巻: 16 ページ: 4662-4665

    • DOI

      10.1021/ol502270q

    • 査読あり
  • [学会発表] ヘリセン型モノホスフィンリガンドの合成と不斉反応場としての展開2014

    • 著者名/発表者名
      山本耕介、臼井一晃、末宗 洋
    • 学会等名
      第31回日本薬学会九州支部大会
    • 発表場所
      第一薬科大学 (福岡県福岡市)
    • 年月日
      2014-12-06 – 2014-12-07
  • [学会発表] 白金触媒による炭素骨格変換反応を利用した置換アズレン類の合成2014

    • 著者名/発表者名
      臼井一晃、田上兼輔、山本耕介、清水貴士、末宗 洋
    • 学会等名
      第40回反応と合成の進歩シンポジウム
    • 発表場所
      東北大学 川内萩ホール (宮城県仙台市)
    • 年月日
      2014-11-10 – 2014-11-11
  • [学会発表] ヘリセン型単座ホスフィン配位子の合成と不斉反応への応用研究2014

    • 著者名/発表者名
      山本耕介、末宗 洋、臼井一晃
    • 学会等名
      第106回有機合成シンポジウム
    • 発表場所
      早稲田大学国際会議場 (東京都新宿区)
    • 年月日
      2014-11-06 – 2014-11-07
  • [学会発表] [5]ヘリセン型モノホスフィン配位子の合成と不斉反応への応用2014

    • 著者名/発表者名
      臼井一晃、山本耕介、末宗 洋
    • 学会等名
      第31回有機合成化学セミナー
    • 発表場所
      休暇村 志賀島 (福岡県福岡市)
    • 年月日
      2014-09-17 – 2014-09-19
  • [学会発表] 動的速度論的光学分割を活用したα-ピロン縮環型ヘリセン類の不斉合成2014

    • 著者名/発表者名
      山本耕介、メイ ビョウ、王子田彰夫、増田寿伸、末宗 洋、臼井一晃、
    • 学会等名
      第51回化学関連支部合同九州大会
    • 発表場所
      北九州国際会議場 (福岡県北九州市)
    • 年月日
      2014-06-28
  • [備考] ホームページ

    • URL

      http://sekkei.phar.kyushu-u.ac.jp/

URL: 

公開日: 2016-06-01  

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