研究実績の概要 |
飼料タンパク質由来ペプチドの吸収機構を分子レベルで調査するためには、小腸上皮細胞を用いたin vitroでの試験が必要不可欠である。近年、小腸上皮細胞を長期間培養する為にはWnt、EGF、R-spondinなどの小腸上皮幹細胞維持因子が必須であることが明らかとなった(Sato T et al., Nature, 459: 262-266. 2009.)。そこで、様々な動物種のオルガノイド培養に成功している東京農業大学の岩槻健准教授の協力の下、EGF、R-spondin 1、Noggin、Wnt-3aを添加した培養液でニワトリの腸管オルガノイドの培養を試みた。その結果、14日以上の腸管オルガノドの培養が可能となった。引き続き、ニワトリ腸管オルガノイドの調製を行い、細胞の形態を免疫組織化学法により解析し、腸管上皮細胞の種類を同定する予定である。 近年、食事由来の高分子ペプチドが腸管から吸収され、そのまま血中へと移行することが報告されている。しかし、血中へと移行した飼料由来の高分子ペプチドがニワトリの生理機能へ及ぼす影響について調査した報告は無い。そこで、反転腸管法を用いて小麦グルテンのトリプシン消化産物由来の高分子ペプチドが吸収されるか否か調査した。ニワトリから小腸を採取し、空腸は空腸近位部、中間部、遠位部に分け、回腸は回腸近位部、中間部、遠位部に分けた。腸管を反転した後、管腔内に5%O2,5%CO2のガスを吹き込んだHank’s液で満たした。小麦グルテン溶液とHank’s液を1:1で混合し、反転腸管をサンプル溶液中に浸した後、37℃で95%O2,5%CO2のガスを吹き込みながら1時間インキュベートした。その後、抗小麦グルテン抗体を用いたWestern blot を行い、空腸よりも回腸で多くの高分子ペプチドの吸収が認められた。
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