研究課題/領域番号 |
14J03825
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
李 ジヨン 九州大学, 統合新領域学府, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 熱活性型遅延蛍光 |
研究実績の概要 |
キサントン骨格を有するTADF材料の開発:一重項-三重項エネルギーギャプならびに濃度消光の制御 熱活性型遅延蛍光(TADF)は最低三重項状態(T1)を最低励起一重項状態(S1)に高効率で変換できるため、有機EL素子において100%の「励起子→光」変換効率を実現できる。TADF材料は従来の蛍光、りん光材料にかわる次世代発光材料として注目されており、現在、盛んに研究が行われている。本研究では、アクセプター部位としてよく知られているキサントンを選択し、種々のドナー部位としてアクリダン誘導体を結合させたTADF材料を設計、合成した。T1状態からS1状態への変換効率を向上させるには、T1-S1エネルギーギャップ(ΔEST)を小さくする必要がある。そして、高効率・低ロールオフの期待できる小さなΔEST、HOMO-LUMOギャップの制御、濃度消光の抑制を行った。これらのTADF材料を発光材料として用いた有機EL素子は、スカイブルー色のEL発光を示した。また、XAc-XTを発光材料として用いたドープ濃度15%の有機EL素子の最大外部量子効率(EQE)は20%に達し、75%の高いドープ濃度でも最大EQEは18%を超えることを明らかにした。適切な分子設計により、濃度消光の抑制とデバイスにおけるロールオフの改善を達成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまで、TADF発光材料を有する分子をOLEDの発光材料として応用する研究を進めてきた。その結果、高効率・低ロールオフの期待できる小さなΔEST、HOMO-LUMOギャップの制御、濃度消光の抑制を行った。これらのTADF材料を発光材料として用いたドープ濃度15%の有機EL素子の最大外部量子効率(EQE)は20%に達した。さらに、オリジナルな新規発光材料の創出を目指して、理論化学手法を利用した分子設計、材料の合成・精製に加えて、光学的な基礎物性評価まで幅広く行い、有機EL素子への応用展開を進めることができた。本研究課題を十分に遂行できていると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
高発光効率・高耐久性・低ロールオフを有するディープブルーTADF材料の開発 ①量子化学計算を用いて、ディープブルー発光を実現するために要求される深いHOMO、浅いLUMO準位を有するドナー・アクセプター骨格の探索を行う。ディープブルー発光を示し、高効率・低ロールオフの期待できる小さなΔESTと大きな振動子強度を両立できるTADF化合物を設計、合成し、素子特性を評価する。素子寿命を評価し、輝度半減時間を見積もる。 ②りん光材料と比較するために、同一の素子構成でりん光材料を発光材料としたOLEDの寿命評価を行い、輝度半減時間を見積もる。その結果をTADF材料のものと比較し、TADF材料の優位性について検証を行う。
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