研究課題/領域番号 |
14J03855
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田原 弘量 京都大学, 化学研究所, 特別研究員(PD) (20765276)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 光物性 / 光電流 / コヒーレント制御 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、固体中の電子正孔系を複数の光パルスによって制御し、新たな機能を持つ物質の状態を創造することである。本年に行った研究は、多励起子状態の生成実験、位相ロックパルスの作製、位相ロックパルスを用いた制御実験の3点である。 まず、電子正孔系の多体相互作用を観測するために、コアシェル型量子ドットの過渡吸収分光を行った。吸収率の過渡的な変化を解析することで、励起強度の増加とともに多体の衝突過程であるオージェ再結合による速い緩和が現れることを観測した。これは、1つの量子ドット中に生成される電子と正孔の数が増加することで、多励起子状態が生成され、オージェ再結合が強く起きることを表している。本研究によって多励起子状態の生成と多体の衝突過程が生じる時間スケール・励起強度を明らかにした。 次に、光パルスによる状態制御を行う上で重要になる「2つの励起パルスの相対位相を固定(ロック)する光学系」の作製を行った。フィードバック制御を行うことで、光路長を高精度に安定化させることに成功した。さらに、この位相ロックパルスを用いることで、半導体中に発生する光電流の変化から電子系の状態変化を測定した。試料には典型的な半導体物質であるGaAsを用い、2つの光パルスを入射するタイミングを変えて測定することで、光電流のコヒーレント制御に成功した。コヒーレント制御の振舞いを解析することで、光電流が生成されるメカニズムを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度に計画していた研究であるコアシェル型量子ドットの過渡吸収分光を行い、電子正孔系のダイナミクスを解析した。さらに、位相ロックパルスの生成に必要な「光路長を高精度に安定化させた光学系」を新たに作製した。この位相ロックパルスによる状態制御の方法を、光電変換応用において重要な光電流生成の制御に用いた実験を行った。研究が予想よりも進展し、この位相ロックパルスを利用した光電流のコヒーレント制御に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
室温における光電流の生成過程の解析・制御に成功したが、低温におけるキャリアの挙動については明らかになっていない。今後はまず、低温における光電流の生成機構を明らかにする。また、これまでは2つの光パルスによる制御実験を行ってきたが、励起に用いる光パルスの数を増大させた新たな状態制御を行う。さらに、この位相ロックパルスによる実験を量子ドットに適用し、電子正孔系の状態制御と多体相互作用の光制御を行う。
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