研究課題/領域番号 |
14J03883
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
笠木 雅史 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | アプリオリ・アポステリオリ / 知識 / 正当化 / 認識論 / 直観 / 哲学方法論 / 国際情報交換 カナダ、イギリス |
研究実績の概要 |
昨年度は、応募時の研究計画から多少変更し、初年度に実施予定であった「アプリオリ・アポステリオリな知識」の研究に関する哲学史的な調査をやや減らし、2年次、3年次に実施予定であった現代の分析哲学における関連研究への積極的な寄与を目指す研究の量を増やし研究を実施した。こうした研究実施時期の変更により、(1)アプリオリ・アポステリオリな知識の定義、(2)哲学的知識のアプリオリ性、(3)アポステリオリな知識に関与する経験以外の要素、といった本研究の研究テーマの多くに関し一定の成果がえられ、それを国内外の学会で発表することができた。また、本研究の副産物として、(4)証言による知識に関与する実践的スキルの解明に関しても分析し、国内学会で発表した。 (1)に関しては、以前に行った海外の研究協力者との共同研究を拡張し、アプリオリな知識の成立に関与する様々な条件を「構成条件」と「背景条件」に区別する具体的な方法を提示する発表を行った。(2)に関しては、近年支持者が増加しつつある「哲学的主張の正当化に直観は重要な役割を果たさない」という見解を補強する事例研究と、それを補助する理論的考察を行い、それぞれ学会で発表した。前者の事例研究はまた、国際学会で発表され、その学会のproceedingsに収録された。(3)はいまだ萌芽段階であるが、認知状態が経験に与える影響が正当化を阻害するものである場合とそうでない場合の区別について研究を行い、国内学会で発表した。証言による知識がアプリオリなものなのかアポステリオリなものなのかという問題が近年議論されていることから、本研究でもこの問題へと取り組むことに着手した。本研究に直接関連する成果はまだえられていないが、副産物として(4)の証言による知識に関する他の問題に対する一定の成果をえたため、国内外の学会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度はアプリオリ・アポステリオリな知識の定義や分析に関する哲学史的調査を主に行う予定だったが、計画を一部変更し、来年度以降に行う予定だった、アプリオリ・アポステリオリな知識に関与する様々な要素の分類と哲学的知識のアプリオリ性に関する研究の量を増やして実施した。この変更の理由は、国際学会に参加する機会を多くえることができたため、現在研究が活性化している主題の研究を行うほうが研究者と意見交換や研究交流を行いやすいと判断したからである。また、本研究は国際的なネットワークを活用する研究としても計画されたため、このような変更を行った方が、今後の研究計画の実施にとっては有効であると予測した。 昨年度に実施した研究では、次年度以降に研究予定であったほぼ全ての研究主題についてある程度の成果をえて、国内外の学会で発表することができた。そのため、今年度以降に昨年度に計画していた哲学史的調査を行う余裕は十分にある。こうした理由から、研究はおおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
本年度はイギリスで3ヶ月在外研究を行う予定である。この在外研究の期間に、本研究の関わる分野で世界的に著名な研究者と研究交流をすることを予定しており、また関係する国際学会やイベントにも参加する予定である。こうした交流を通じ、本研究に最先端の知見や研究成果を取り入れることができると考えている。 また、昨年度に十分に行えなかったアプリオリ・アポステリオリな知識の定義についての哲学史的研究を今年度の後半で行うことによって、この点での研究計画の遅延を解消する。同時に、昨年度に開始したが萌芽的な段階にある、アポステリオリな知識の形成に寄与、阻害する要素と、それらが機能するための条件についての研究を、認知科学などの経験科学の成果をとりいれつつ、より十分に展開する。この研究により、アプリオリな知識の形成に寄与、阻害する要素についても研究を進め、本研究の目的である「経験的、非経験的要素の複雑な作用を組み込んだ新しいアプリオリ・アポステリオリな知識の分析」を具体的に発展させることを予定している。
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