平成26年度は、(1)日本語の埋め込み文であるテ節と主要部移動の関連性、および(2)日本語の和語動詞文・動名詞(verbal noun)文と主要部移動の関連性についての研究を行った。(1)に関しては、テ節の派生に関する考察をまとめ、査読付き学術雑誌に投稿した。当初想定していたよりも少々時間を要したものの、年度内に採択の通知を受け取ることができた。そこでは、移動現象や省略現象に基づき、テ節の派生には主要部移動が関与していることを論じる一方で、テ節の派生に主要部移動を認めない代替案は経験的に不十分であることを論じた。(2)では、日本語の述語上昇(predicate raising)と関連するトピックである。省略現象に見られる日本語の和語動詞文(e.g. 帰る)と動名詞文(e.g. 帰国する)の振る舞いの違いを、「和語動詞は統語部門において述語上昇を受けるが、動名詞は受けない」という提案により説明することを試みた。この研究は年度内にシカゴ言語学会(2015年4月開催)に採択されており、さらなる発展の足がかりとしたい。よく知られているように、主要部後続型言語に分類される日本語においては、主要部移動が文法に存在するかは少なくとも語順からは明らかではない。(1)と(2)で扱っているデータは異なるが、「語順からは特定できないものの、日本語の文法には主要部移動が備わっていなければならない」という結論を導く議論である点は共通している。
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