研究課題/領域番号 |
14J03898
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
佐藤 友哉 早稲田大学, 人間科学学術院, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | 認知行動療法 / 関係フレームづけ / 象徴的般化 / 社交不安 / 全般性 |
研究実績の概要 |
今年後は,直接的な恐怖体験が少ないにもかかわらず,恐怖反応が拡大する現象である恐怖反応の「象徴的般化」を示す状態像を,必ずしも物理的に類似しない刺激と刺激を関係づける行動である「関係フレームづけ」に基づいて記述し,これらの状態像に対して有効性が示唆される介入技法(脱フュージョン)の適切な使用方法に関する実験的検討を行なった。具体的には,(a)関係フレームづけの個人差を測定する方法の妥当性の研究(研究1:データ収集中),(b)恐怖反応の象徴的般化を示すことが想定される状態像の1つである「全般性の社交不安」を関係フレームづけの個人差の観点から記述した研究(研究2:佐藤他,印刷中),(c)脱フュージョンの適切な使用方法を検討した研究(研究3:国内学術雑誌に投稿中),(d)全般性の社交不安に対する脱フュージョンの効果を検討した研究(研究4:研究手続き確認中)を実施した。その結果,(a)関係フレームづけの個人差を測定する方法としてGo / No-go Association Task(GNAT;Nosek & Banaji, 2001)を用いることが妥当であること(研究1),(b)全般性の社交不安が関係フレームづけの個人差によって記述可能であること(研究2),(c)脱フュージョンは,恐怖反応の減弱を目的とした中核的な介入技法であるエクスポージャーとは作用機序が異なり,恐怖反応の象徴的般化を示す状態像(たとえば,全般性の社交不安)に対しては,従来の介入技法(エクスポージャー)に加えて,脱フュージョンを実施することが有効である可能性(研究3)が示唆された。 以上の研究成果は,これまでの理論的枠組みのみでは記述が困難であった状態像(全般性の社交不安)を,新たな観点(関係フレームづけ)から理解し,これらの理論的枠組みに基づいた介入技法を立案するための基礎的知見となると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的であった研究は概ね遂行され,当初の研究目的であった(a)恐怖反応の象徴的般化を示す状態像(全般性の社交不安)を関係フレームづけに基づいて記述すること,(b)これらの状態像に対する新たな介入技法の有効性を示唆できたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,引き続き,関係フレームづけの個人差を測定する方法の妥当性の検討や,全般性の社交不安に対する脱フュージョンの有効性の検討をすることに加え,恐怖反応の減弱を目的とした介入技法(エクスポージャー)の実施後に恐怖反応が再び生起する現象である「恐怖の復帰」を,関係フレームづけの理論的枠組みから記述することを目的とした研究を実施することを予定している。これらを検討することで,従来の介入技法では十分な効果が得られなかった状態像に対する新たな介入技法を立案できる可能性が考えられる。
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