研究課題/領域番号 |
14J03912
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
村上 由美 早稲田大学, 文学学術院, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | マラルメ / フランス文学 / 仏文学 / フランス詩 / 19世紀 / 19世紀末 / 舞踊評論 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、19世紀フランスの詩人ステファヌ・マラルメ (1842-1898) の舞踊評論「芝居鉛筆書き」を対象に、この評論がもつ特異性および革新性に着目しながら、マラルメにおいて舞踊とは何かという問題を解明することである。 本年度前半はフランスをはじめとする海外での文献調査を中心に据え、主にパリ第四大学のベルトラン・マルシャル教授のもとで研究活動を行った。フランスの研究機関主催の文学研究セミナーへの参加を通して研究手法を学び、海外の研究者と交流する機会を得た。また、国立図書館などで、資料調査を行うことができた。本年度後半は、得られた研究成果をまとめることに努めた。第一に、『早稲田大学大学院文学研究科紀要』における「マラルメとバレエの台本――『インド説話集』における舞踊場面について――」(査読付き)では、マラルメが理想とする舞踊の形態を明確にするため、「インド説話集」において、マラルメが想像力を駆使してバレエを描いている箇所に着目し、この舞踊の場面を分析することで、マラルメがいかなる舞踊を理想としていたのかを考察した。これにより、マラルメがきわめて古典的なバレエを希求し、バレエ作品を成立させるための諸条件に忠実であることが明らかとなった。 第二に、日本フランス語フランス文学会秋季全国大会において行った口頭発表、「マラルメとローデンバックにおける舞踊思想について――マラルメの書きかえにみられる二人の舞踊観の相違から――」では、マラルメから影響をうけて舞踊評論を書いたジョルジュ・ローデンバックによる舞踊思想を分析し、マラルメの思想との比較を行った。この二人が舞踊観をめぐり共鳴しあっているようでありながら深い相違がある点が重要であり、ローデンバックと議論を重ねながら、マラルメが自身の思想を発展させ変化させている点が確認できたことは現時点において意義深い発見であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マラルメの舞踊評論の解読作業はおおむね順調に進んできた。本年度得られた研究成果を二つに分割し、学会と論文で発表する機会に恵まれた。これら二つの研究をとおして、マラルメにおける舞踊思想のもつ保守性と革新性の一側面を明らかにすることができ、マラルメにおける舞踊の問題を徹底的に解明する道が開かれたと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、1880年代の評論記事から1890年代の詩的散文に至る生成過程において、マラルメの舞踊思想が進化=深化している点に着目し、思想が変化した要因に迫る。マラルメにおける舞踊論に頻出するいくつかの鍵概念を精査し、そのうえで、そうした舞踊の概念が詩作品にどのようなかたちで関係しているのかを明らかにする。
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