研究課題
本年度は、自励振動ヒートパイプ(Oscillating Heat Pipe: OHP)の内部流動モデルを用いて、JAXAにより行われている軌道上試験との比較、起動特性の解明を行った。また、従来研究では不明であったOHPの熱輸送限界の再現に成功した。一次元内部流動モデルを用いたOHPの軌道上実証試験との比較に関しては、前年度までに進めていた内部流動モデルに微小管内での沸騰モデル、逆止弁アルゴリズムを付加することで、先行研究と比較してさらに高精度な現象予測が可能なモデルの構築に成功し、それを実証試験の再現へと応用した。実験との比較からモデルが定量的にOHPの性能を予測することが可能であることを確認した。また、軌道上実証試験で観察された、起動時の不具合の原因を解明するための計算を行った。その結果、OHPが搭載されている小型衛星が日陰に入った際に搭載パネルの温度が低下し内部気液の分布が変化していることが原因であることが分かった。さらに、この事実を受け起動特性改善のための解決策を提案することを目指した。OHPが動作しなかった条件においても液相が微小な振動をしていることが分かっていたので、逆止弁の位置を変更し、微小な振動に擾乱を与えることでOHPを起動させることを試みた。その結果、いかなる初期気液分布の条件であっても、逆止弁が液相に干渉する位置に存在していればOHPが起動できることが分かった。また、先行研究においては再現することができていなかったOHPの動作限界を予測することに成功した。本研究ではあらかじめ動作限界に関して実験を行い、OHPの熱輸送性能が著しく悪化する熱入力域を断定しておき、計算でも同様の熱入力域でOHPの熱輸送性能が低下するか検証した。その結果、気相周りの薄液膜の厚さが比較的薄い条件において高熱入力域でOHPの熱輸送能力が、実験と同様に著しく低下するという結果を得た。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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