研究課題/領域番号 |
14J03992
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
石山 謙 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | 月科学研究 |
研究実績の概要 |
本研究は、(1)月の地質および、(2)月の地下構造の解明から成る研究である。研究(1)について、月の地質を議論するため、3カ所の海領域(湿りの海、晴れの海、嵐の大洋)において、月上部玄武岩層の誘電率を推定し、その値から空隙率を推定した。湿りの海では、誘電率値は4.2~5.1と推定され、21%~33%の空隙が存在するが推定された。この空隙率は、主に、火山灰の空隙成分、溶岩固有の空隙成分、隕石衝突由来の空隙成分から成る。しかし、隕石衝突由来の空隙成分が、月の上部玄武岩層にどの程度含まれるかは未だ不明であるため、本研究では、地球の玄武岩に弾丸を衝突させてクレーターを作る実験を行い、人工的なクレーター周辺のクラック量や誘電率、密度の測定を試みた。初期解析では、クラックの量が増加することで、誘電率や密度が低下することが判明しており、2015年の解析では、クラックの異方性(入り方)の影響の詳細を調査する予定である。 研究(2)について、計算機シミュレーションの2次元コードを作成し、溶岩チューブや断層などの複雑な地形からの電磁波のエコーパターンを調べ、月レーダーサウンダー観測データとの比較を試みたが、類似したエコーパターンを見つけることはできなかった。但し、表面のラフネスやバルク誘電率の非一様性を考慮しておらず、現実の複雑なエコーパターンを十分模擬できていなかった可能性がある。2015年度はこれらを考慮した媒質モデルで計算に取り組む。一方、今後行う3次元でのエコーシミュレーションとの比較の準備として、月レーダーサウンダーデータから月地下反射面の3次元マップの導出を行った。この3次元マップは、層状の複雑でない地下構造の解析研究においてもきわめて有用である。本研究では、この3次元マップを活用した地下層の傾斜角の調査から、月リソスフェアのたわみを示唆する地下構造を発見し、現在、これに関する論文をまとめている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究(1)では、月上部玄武岩層の誘電率の推定から、月の地質を議論する上で重要なパラメータである空隙率の推定を行うことに成功した。この研究からは、月上部の玄武岩層は、空隙率の高い地質であることが示唆された。さらに、隕石衝突が月の上部玄武岩層にどの程度の空隙を形成するのかを調査するため、衝突実験を行った。したがって、研究(1)は当初の計画以上に研究が進んでいる。 研究(2)では、計算機シミュレーションの2次元コードを作成し、溶岩チューブや断層などの複雑な地形からの電磁波のエコーパターンを調べ、月レーダーサウンダー観測データの比較を試みたが、類似したエコーパターンを見つけることはできなかった。この結果については、表面のラフネスやバルク誘電率の非一様性を考慮していなかった点が原因であると分析しており、これらを考慮した媒質モデルの検討を進めている。したがって、研究(2)は、実施して明らかになった問題点に対応して計画を小修正しながらも着実に研究が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
研究(1)では、隕石衝突によって形成される実際のクラックとレーダ観測から導出される誘電率、密度、空隙率の関係を詳しく調査するため、玄武岩試料に人工的に作成したクレーター周辺の誘電率、密度、空隙率の解析を行う。衝突実験は、すでに、2014年12月に宇宙科学研究所の衝突実験施設を利用して行った。今後は、特にクラックの入り方(異方性)と誘電率・密度の関係に注目して調査を進める。 研究(2)では、2014年度に実施した地下エコーの計算機シミュレーションの結果から、月面上のラフネスやバルク誘電率の非一様性を考慮する必要性が明らかになってきた。2015年度は、それらを考慮した媒質モデルを作成し、再度計算機シミュレーションを行う予定である。
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