研究課題/領域番号 |
14J03996
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
大林 翼 北海道大学, 農学院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | ホソヘリカメムシ / 共生細菌 / Burkholderia / トランスクリプトーム / システインリッチタンパク質 / 共生器官 / RNAi / 抗菌タンパク質 |
研究実績の概要 |
ホソヘリカメムシは中腸後端に存在する盲のうと呼ばれる共生器官にBurkholderia共生細菌を保持し、共生器官で多数の機能未知なシステインリッチタンパク質が発現していることが知られている。本研究課題ではシステインリッチタンパク質がBurkholderia共生細菌に及ぼす影響を明らかにし、共生における機能を解明することを目的として今年度は以下の研究を行った。 (1) システインリッチタンパク質の経時的トランスクリプトーム解析 共生細菌の感染個体および非感染体を用意し、感染後24時間ごとにカメムシを回収した。中腸各部位のM3部、M4B部およびM4部からそれぞれRNAを抽出し、RNA-seqを用いて経時的トランスクリプトーム解析を行った。その結果、システインリッチタンパク質は中腸の各部位で特異的に発現し、その発現パターンは多様であることが明らかとなった。中腸各部位特異的なシステインリッチタンパク質は少なくともM3部で3種類、M4B部で9種類、M4部で78種類を同定することができた。特に、M4部は盲のうと呼ばれる袋状組織が無数に発達し、共生細菌が定着する部位であるが、M4特異的な78種類のうち少なくとも60種類以上のシステインリッチタンパク質が共生細菌の感染2日後から高発現していた。感染2日後には、共生細菌が盲のう内で増殖し始めることから、共生細菌の感染によって多くのシステインリッチタンパク質の発現が誘導されることが示唆された。 (2) in situ ハイブリダイゼーションによるシステインリッチタンパク質の発現部位の観察 CCR0043およびCCR0061という2種類のシステインリッチタンパク質に着目し、それぞれのDIGプローブを作成し、共生細菌の感染個体および非感染個体を用いてin situハイブリダイゼーションを行った。その結果、CCR0043およびCCR0061いずれも共生細菌感染個体のM4部で特異的に発現することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の目的はシステインリッチタンパク質がBurkholderiaとの共生に果たす役割の解明であり、今年度は、共生細菌の感染過程におけるシステインリッチタンパク質の発現パターンを解析し、共生細菌の感染によってシステインリッチタンパク質の発現が誘導されることが示された。また、次年度に行う予定であるin vivoにおけるシステインリッチタンパク質の機能を解明するため、システインリッチタンパク質に対するRNAiを行い、共生細菌における表現型の解析を始めている。以上より、本研究課題は計画通り順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の予定はin vivoおよびin vitroにおけるシステインリッチタンパク質の機能解析である。In vivoではシステインリッチタンパク質に対するRNAiを行い、中腸共生器官の形態や遺伝子発現および共生細菌の細胞形態や個体数などが変化するかを調査する。In vitroでは、システインリッチタンパク質の合成ペプチドを用いて、共生細菌の生育および遺伝子発現変化などの生化学的調査を行う。
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