研究実績の概要 |
ホソヘリカメムシは中腸後端に存在する盲嚢と呼ばれる共生器官にBurkholderia共生細菌を保持し、共生器官で多数の機能未知なシステインリッチペプチド(CRs)が発現していることが知られている。本研究課題ではCRsがBurkholderia共生細菌に及ぼす影響を明らかにし、共生における機能を解明することを目的としている。 研究2年目にあたる本年度は、(1)in vitroにおけるCRsの抗菌活性評価、(2)CRsに対するRNAi実験を行った。(1)については発現量の高い3つのCRs(CR0008, CR0179, CR0480)について、化学合成したCRsを共生細菌に添加し、in vitroにおける抗菌活性を調べた。その結果、すべてのCRsが共生細菌に対して高い抗菌活性を持つことが明らかになった。特に、培養した共生細菌よりも共生器官から単離した共生細菌に対して高い抗菌作用を示し、この結果はCRsが共生細菌に対してカメムシ腸内で発達した機能があるのではないかということを示唆している。(2)については発現量の高い4つのCRs(CR0008, CR0037, CR0043, CR0480)を同時にターゲットにしたカクテルRNAiを行ったところ、ターゲットにしたすべてのCRsの発現がRNAiによって抑制されていたものの、共生細菌の個体数、細胞サイズ、そして、DNA量に変化が見られなかった。その要因としてはシステインリッチペプチドの冗長性が1つの原因であると考えられた。網羅的なCRsの発現制御を試みるために、CRsの制御因子としての可能性があった免疫関連遺伝子および転写因子に対するRNAiを行った。その結果、宿主免疫系はCRsの発現に直接関与していないこと、および転写因子はCRsの発現および共生細菌の個体数に影響を及ぼすことが明らかになった。ただし転写因子はさまざまな遺伝子の発現を制御していることから、他の遺伝子発現の影響についてさらなる調査が必要である。本研究によって得られた成果について国内外の学会において発表を行い、また論文として発表した。
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