研究課題
ホソヘリカメムシは中腸後端の盲のうという部位にたった1種類のBurkholderia細菌を保持しているが、この特異的な共生関係を支える分子基盤は不明な点が多い。本研究では、盲のうで特異的に発現している“システインリッチペプチド”の腸内共生に果たす役割の解明を目指している。研究3年目の今年度は、Burkholderia共生細菌の昆虫腸内への適応機構を総合的に理解するために、試験管培養時(in vitro)および昆虫腸内共生時(in vivo)の2種類の細菌細胞を用意し、共生に伴う細胞形態、生理状態および遺伝子発現の変化を網羅的に調査した。その結果、概ねその全体像を掴むことに成功し、システインリッチペプチドの腸内共生に果たす役割に迫ることができた。In vivoのBurkholderia共生細菌は、硫酸塩やアラントインなど宿主由来の老廃物を利用して活発に増殖し、LPS構造が欠損し各種ストレスに弱くなっていることが明らかになった。また、Burkholderia共生細菌は、他の昆虫の共生細菌で報告されているような必須アミノ酸・ビタミン類の生合成経路のin vivoでの高発現は見られなかった。先行研究ではカメムシ消化管M4B部において消化酵素の高発現が報告されており、この部位において共生細菌が消化されその栄養素がまるごと宿主カメムシに吸収されている可能性が考えられている。盲のう特異的システインリッチペプチドはBurkholderia共生細菌の細胞膜に作用し、Burkholderia共生細菌に対する抗菌活性を有していたことから、それらシステインリッチペプチドがin vivoのBurkholderia共生細菌にみられたLPS構造の変化やストレス感受性の向上を引き起こし、カメムシ消化管内での菌体消化の効率化に寄与している可能性が高いものと考えられる。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Developmental and comparative immunology
巻: 69 ページ: 12-22
10.1016/j.dci.2016.11.019