研究課題
昨年度は、気候と生理生態学的モデルを結合したECD-mgモデル(Coupled Model for Ecophysiological and Climatological Distribution of Mosquito Generation)を用いて、マラリア媒介蚊の季節的消長を再現することに成功した。そのため今年度は、マラリア媒介蚊各種の空間的な分布の再現と他の感染症媒介蚊への応用可能性への模索を目的として研究を行った。既往研究をもとに、モンスーンアジア域に生息するマラリア媒介蚊であるハマダラカをいくつかの種ごとに分類し、発育零点等の生育パラメータを推定してECD-mgモデルへの入力値とした。その後、同様に既往研究から各種の分布状況と発生時期を集計し、モデルから得られた各種の潜在生育可能域や発生期間とを比較した。その結果、温帯・冷温帯域での各種成虫の発生域と発生期間は一致していたが、熱帯域を中心に、いくつかの地域ではモデルの予測結果と実際の発生種や発生時期には、大きな違いが見られた。よって温帯域や冷温帯域では、気候や各種の生理生態学的要素が各種の発生地域と発生消長を規定する強い要素であるのに対し、熱帯域では、それ以外の森林伐採等の人為要因や種間競争などの要素も各種の発生に強く影響を与えている可能性が高いことが明らかとなった。一方、他の感染症媒介蚊への応用に関しては、感染症数理セミナーでの意見交換等を通して、ECD-mgモデルは、デング熱の媒介蚊であるシマカに応用可能性が高いこと、加えて近年開発されている様々な感染症流行の数理モデルと組み合わせることで、デング熱発生患者の数理的な予測にも応用出来る可能性が高いことが明らかとなった。そのため、一般公開されつつある代々木公園周辺でのデング熱発生の疫学データ等をもとにECD-mgモデル等を用いることで、今後将来の気候変動影響も考慮したデング熱媒介蚊とデング熱患者等の将来発生予測への応用が強く期待出来る成果が得られたものと考えられる。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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