1.「赤血球一体の再配向現象」の報告 Saarland大学Wagner教授との共同研究である「赤血球一体の再配向現象」についてその結果を学術誌に投稿したが,現在は査読結果に基づいて論文を修正している段階である.
2. 二体の赤血球・球体カプセルの沈降現象 希薄化させた小さな赤血球体積率下でも二体の赤血球の連銭が確認できることが実験で知られている.二体の赤血球接着は血漿高分子により近距離の引力によって引き起こされることが知られているが,遠く離れた二つの血球細胞が近づくメカニズムは流体力学的作用であると考えられる.本課題では二つの水平に並んだカプセルが接近するか離れるかはカプセルのアスペクト比が大きく要因であること明らかにし,アスペクト比が小さいカプセルほどお互いに接近する一方で,大きいカプセルほどお互いに遠ざけあうことがわかった.一方で上下に並んだカプセルではアスペクト比に依存せず互いに接近する速度を持ち,最終的には接着に至ることを解明した.従って現在までの結果を総合すると,赤血球二体の連銭は上下に並んだ二体の赤血球の速度差によって接着の形成に至ったと結論付けられる.
3. 血液(カプセル懸濁液)の粘弾性応答 また研究計画を越える範囲であるが,本課題では血液の粘弾性応答についての数値解析も実施した.赤血球をはじめとするカプセルは弾性体としての性質を持っているため,血液のようなカプセル懸濁液は粘弾性体として見做すことができる.本課題では懸濁液のカプセルの体積率が変化したときにその応答の位相がどのように変化するか,その詳細を解析した.本解析ではSAOSからLAOSまで広い領域で解析を実施したが,おおよそ全ての歪み,キャピラリー数において,体積率に対してほぼ線形に粘性応力応答の位相が弾性側へとシフトすることが明らかとなった.
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