発酵食品を代表として私たちの生活には酵母(真菌)を日常生活で摂取する機会が多く、腸管には腸内真菌が腸内細菌と同様に多数存在していることが考えられるが、実際のところ腸管内に存在する真菌と免疫機構に関する研究は進んでいない。本研究は、腸内真菌の実態が未解明であることと相関して、腸内真菌が宿主免疫系の発達や様々な疾患の病態に及ぼす影響に至っては全く解析が進んでいないことに着目した。 近年では次世代シーケンサーを用いた細菌叢の解析は商業化されるまで発展しているが、真菌叢の次世代シーケンサーを用いた解析法は確立されたものがなく、特にヒト腸内真菌叢の網羅的解析の報告は乏しい。本研究では過去の報告を参照し、より精度の高いヒト腸内真菌叢解析法の確立に着手した。 まず、各真菌に保存されている領域の一つであるITS領域をターゲットとしたユニバーサルプライマーを設計した。ITS領域で保存された配列は各菌種によって長さが大きく異なり(100bpから1000bp程度)、細菌叢の解析で頻用されている次世代シーケンサー(Ion PGMやIlluminaなど)では、1度の解析で全長を読むことが非常に難しい菌種も存在する。そのため、本研究では、解析する次世代シーケンサーとして1000bpを超える配列も解読可能なPacBio RSIIを使用した。腸内真菌叢には数多くの真菌種が存在すると考えられるため、次に予め菌種が特定されている単一菌から抽出したDNAを用いて、定性および定量の精度を検討した。解析を行った全菌種において属レベルまでの解析が可能であり、その半数以上がさらに詳細な種レベルまでの解析が可能であった。次に、日本人の健常者を対象として解析を行ったところ、約70種類の菌種が同定され、Candida albicansおよびSaccharomyces cervisiaeが主要な構成成分であることが判明した。
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