今年度の研究目的はビーム幅可変型光送信機の開発完了であるが,最重要である光学系の設計が詳細になるに連れ,達成目標が実現困難であることが明らかになり,再設計を余儀なくされたため,開発完了には至らなかった.本年度は光通信機のモジュールの開発と購入物品の評価を主に行った. 光通信機は4つのモジュールからなり,通信用のレーザ発信部,通信相手のレーザ位置を測定するレーザ受光部,衛星の擾乱をキャンセルする精追尾機構,本光送信機最大の特徴であるビーム幅可変機構から形成される.本年度はレーザ発信部,およびビーム幅可変機構の開発を行った.通信用レーザはレーザダイオードをマイコンやFPGAなどの衛星に搭載可能なコントローラで制御する必要があり,そのドライバ回路の開発やコントローラの評価を行った.またビーム幅可変機構としては中空ステッピングモータとネジ式直動機構を組み合わせた機構を提案し,実際に試作機を製作した.しかし光学系の設計が難航したため全てのモジュールの開発はできず,付随してモジュールを組み合わせての総合評価も実施できなかった.一方,通信手順のアルゴリズムの開発や通信可能性などは数値シミュレーション上で評価を行った.これによりビーム幅可変通信機が超小型衛星の光通信において有効であることを確認できた.尚,評価試験の際に所属研究室の共同研究相手である情報通信研究機構(NICT)への出張を予定していたが,試験装置を借用できたので試験は東北大学で実施した.
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