不活性化センダイウイルス(HVJ-E)のような免疫活性化能・細胞融合能・細胞種選択的な細胞種誘導能を有する不活性化ウイルスを、基板上に固定化した感染性ウイルス模倣表面を構築し、その機能を明らかにする、またコントロールすることが本研究課題の主題であった。平成26年度はHVJ-Eを、高分子の交互積層法の一種であるLayer-by-Layer (LbL) 法を利用し、基板上に固定化させることに成功し、その報告を行った。平成27年度はその膜タンパク質活性の評価と細胞選択的な機能誘導について評価した。HVJ-Eを固定化した本作製基板が発現する機能は主に二種類であり、一つ目は細胞分離能、二つ目が癌細胞の細胞死誘導能である。HVJ-Eを固定化させたガラス基板上にHVJ-EレセプターであるGD1aを発現する細胞と発現しない細胞を播種した場合、GD1a発現細胞のみが優位に表面に吸着した。この性質を利用した細胞選別基板を開発し、その成果を学術誌Biomaterials Science誌に報告した。次に、本固定化技術を生分解性高分子であるPoly-ε-Caprolactoneからなるナノファイバー上に施した。HVJ-Eを固定化させたナノファイバーをヒト前立腺癌細胞 (PC-3) と共培養した場合、PC-3に対する細胞死誘導が確認された。本成果は学術誌Materialsに報告した。以上、HVJ-Eの基板表面への固定化、およびそれらがもたらす細胞分離能、および癌細胞に対する細胞死誘導能は、今後の再生医療・抗癌治療に広く応用が期待される。
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