研究課題
35億年より前の時代から微生物硫酸還元の痕跡の証拠を得るため、太古代花崗岩類中の硫化鉱物の四種硫黄同位体比を分析した。先行研究では日本の顕生代花崗岩の二種硫黄同位体比の分析から、海水硫酸や堆積物中の硫化物の硫黄の一部が花崗岩に取り込まれることが示唆されている。太古代の堆積岩の硫黄は平均すると正の同位体異常(D33S)を持つ一方、硫酸塩は負の同位体異常を持つから、特に太古代の花崗岩の硫黄同位体比を分析すればその硫黄の由来をより明瞭に制約できることが期待できる。太古代花崗岩およそ40~36億年前のカナダ・アカスタ、35, 32億年前の西オーストラリア・マウントエドガー、26億年前の南インド・チトラドゥルガに産出するものを使用し、計30余りの太古代花崗岩を分析した。その結果、これら太古代花崗岩中の硫化鉱物のD33S値はほとんどが、わずかではあるが負の同位体異常を示し、当時の海水硫酸が花崗岩に混入したことを強く示した。一方で、少数は正のD33S値を示し、太古代でも当時の堆積物や地殻物質が花崗岩に取り込まれていることを示した。さらに、2つの同位体異常(D33S & D36S)を組み合わせることによって、当時の微生物硫酸還元を評価した。微生物硫酸還元によって形成された硫化鉱物は特有の傾き(D36S/D33S = -10)を示すことが知られているが、花崗岩の四種硫黄同位体比はこれに近い傾きを示した。このことは即ち、海水硫酸が花崗岩に取り込まれる間の過程、おそらく海洋底において微生物硫酸還元反応が関与していることを示唆している。このような特徴は40億年前のアカスタ片麻岩からも得られたため、最古の微生物硫酸還元活動を示す証拠とした。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Earth and Planetary Science Letters
巻: 453 ページ: 9-22
https://doi.org/10.1016/j.epsl.2016.07.057