研究課題/領域番号 |
14J04108
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
尾崎 恭平 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | ナノグラフェン / パラジウム / C-H官能基化 / 有機化学 |
研究実績の概要 |
グラフェンをナノメートルサイズにダウンサイジングしたナノグラフェンは、近年最も注目を集める次世代有機エレクトロニクス材料の一つである。ナノグラフェンのもつ物理的性質は既存の材料を凌駕するとも言われているが、幅や端構造に強く依存するためその実現には至っていない。そこで近年最も注目を集める手法の一つが、ナノグラフェンのボトムアップ合成法である。この手法は、ナノグラフェンの部品となる小さな鋳型分子を数段階かけて逐次的に連結し大きなナノグラフェン前駆体を合成した後、炭素-炭素結合を形成するベンゼン環のシート化反応により達成されてきた。しかしながら、最終段階のシート化反応は強い酸化条件下行うため、転移反応やオリゴマー化などの副反応が進行し、結果としてナノグラフェンを混合物として得ることしかできなかった。このような背景のもと、申請者はグラフェンの部分構造をもつ多環芳香族炭化水素(PAH)から1段階でπ拡張することでナノグラフェンを合成する新手法「APEX反応:Annulative pi-extension reaction」の開発に取り組んだ。 PAHの一つ、フェナントレンを鋳型として条件の検討を行ったところ、カチオン性パラジウム/オルトクロラニル触媒存在下、ジベンゾシロールをπ拡張剤として用いることで、鋳型からナノグラフェンへのAPEX反応が効率的に進行することが分かった。機構解明研究を行った結果、本反応はジベンゾシロールのトランスメタル化により生じたアリールパラジウム種が、PAHの最も二重結合性の高いK領域へ配位することを足がかりにして進行していることがわかった。本反応の開発により、様々なPAHおよびジベンゾシロールを鋳型に用いることで、鋳型の構造情報に基づいたナノグラフェンを1段階で合成することが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今回開発したAPEX反応は、従来法と比較して工程数、操作性、構造制御の面で非常に優れたナノグラフェン合成法である。また、「鋳型のもつ構造情報をもとに、方向を決めながら炭素のシートを伸ばす」という極めて直感的な合成法が確立されたことで、様々な構造と機能をもつナノグラフェンを設計図通りに合成する道が拓けたと言える。
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今後の研究の推進方策 |
APEX反応の開発により簡便なナノグラフェン合成法が確立できた。しかし、反応性と溶解性というナノグラフェン合成における2つの潜在的な問題を解決するには至っていない。そのため、新たな触媒設計によりこの問題の解決を目指す。
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