研究課題/領域番号 |
14J04135
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
三原 のぞみ 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
|
キーワード | ポルフィリン / フタロシアニン / 超分子触媒 / ロタキサン |
研究実績の概要 |
本研究は、異種の金属ポルフィリンと金属フタロシアニンを、数、配列、空間配置を制御してスタッキングさせて配列化することで、ポルフィリン/フタロシアニン間のナノ空間を反応場として利用した、分子認識・変換・活性のスイッチングなどの多重機能を持つ触媒を構築することを目的とする。 26年度筆者らは、4つのクラウンエーテル部位を有するフタロシアニンと、4つのアルキルアンモニウム鎖を有するポルフィリンが、柔軟なロタキサン結合により4カ所で連結されたスタッキング型ダイマー中に、異なる2つの金属イオンを配列化できることを示した。次に、スタッキング型ダイマーが4つのアンモニウム部位を有することを利用し、テトラアニオン性ポルフィリンであるTPPS とのイオン性会合体を形成することで、3種の異なる金属錯体を配列化したスタッキング型トリマーを構築した。このスタッキング型トリマーにおいては、TPPSとフタロシアニンが強く相互作用しているため、TPPSに導入する金属イオンを変えることで、フタロシアニンの酸化還元電位をチューニング可能であることがわかった。このスタッキング型トリマー形成を利用すれば、種々の金属イオンを配列化した触媒が構築可能であることに加え、TPPSの金属イオンを変えてフタロシアニンの電子状態を変化させることで、触媒の反応活性を制御できる可能性がある。 さらに、スタッキング型ダイマーに鉄イオンを作用させることで、ポルフィリン・フタロシアニン中心の2つのFe3+が酸素原子によって架橋された錯体を合成した。この反応では、Fe2+錯体が酸素により酸化される際、空気中の酸素分子を活性化して分子内に取り込んでいるものと考えられる。この架橋酸素を酸化剤として利用することができれば、酸素を酸化源として用いた酸化触媒の開発につながることから、現在、触媒反応の検討をおこなっている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
筆者らは、3種の異なる金属錯体を配列化したポルフィリン/フタロシアニンスタッキンング型アレイの構築法を確立できた。このことは、スタッキング型アレイを触媒として利用する上で、重要な要素であると考えられる。また、酸化触媒として働き得る酸素架橋鉄2核ダイマーが合成でき、現在、これを用いた触媒反応検討もおこなっていることから、研究はおおむね順調に進行していると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度、筆者らはまず、ポルフィリンとフタロシアニンが4重のロタキサン結合により連結されたスタッキング型ダイマーの、酸素架橋型鉄2核錯体を用いて、酸素を酸化源とする光酸化触媒反応について検討をおこなう。この触媒反応では、光照射により酸素架橋型鉄2核錯体の酸素-鉄結合が解裂し、酸化活性種である鉄4価オキソ種が生成することを利用する。まず、ポルフィリンとフタロシアニンを連結するアルキル側鎖の長さを変え、ポルフィリン/フタロシアニン間の空間の大きさを制御することによる、基質のサイズ選択性の制御について検討する。さらに、アニオン性ポルフィリンとの会合体形成を利用して、鉄フタロシアニンの電子状態を変えることにより、触媒活性の制御が可能かどうかについても合わせて検討する予定である。 また、スタッキング型ダイマーのポルフィリン/フタロシアニン間に、キラルな空間を創出することによる、エナンチオ選択的触媒反応についても検討する。スタッキング型ダイマーはプロトン化可能なトリアゾール部位を有するため、キラルな構造を持つ酸の添加により、ポルフィリンとフタロシアニンの面同士の重なり方のキラリティを制御できれば、キラルな空間を創出可能と考えられる。
|