研究課題/領域番号 |
14J04135
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
三原 のぞみ 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
|
キーワード | ポルフィリン / フタロシアニン / 超分子触媒 / ロタキサン / 酸素還元触媒 |
研究実績の概要 |
本研究では、ポルフィリンとフタロシアニンが、4重のロタキサン結合によりface-to-face型に会合したヘテロダイマーをベースとして、種々の小分子や有機分子の酸化還元触媒として働くと期待できる超分子錯体を構築した。例えば、ヘテロダイマーを2核Fe(II)錯体へ誘導した後、酸素もしくはアジドイオンを作用させることで、酸素架橋2核Fe(III)錯体および、窒素架橋2核Fe(IV)錯体を得た。 次に、得られた酸素架橋2核Fe(III)錯体による電気化学的な酸素還元触媒反応を検討した。燃料電池のカソード反応では、白金を触媒とした電気化学的な酸素の4電子還元反応が用いられている。しかしこの触媒反応は、大きな過電圧を加える必要があることや、副反応により過酸化水素が発生すること、希少で高価な白金を用いることなどが問題となるため、白金に替わる新規触媒の開発が期待されている。本研究で開発した酸素架橋2核Fe(III)錯体を用いて酸素還元触媒反応の検討を行った結果、副生成物である過酸化水素の発生は抑えられ、目的物である水の生成が高選択的に進行した。また、白金触媒に比べると、反応には、まだ大きな過電圧が必要ではあるが、ポルフィリンとフタロシアニンを用いた異種のFe(III)錯体をフレキシブルなロタキサン結合で連結することが、過電圧を大きく低下させるために有効であることを見出した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
燃料電池や物質変換に幅広く応用ができる可能性を持つ鉄2核錯体の合成法を確立し、その酸素還元活性を定量的に評価することができたため、概ね順調に進展していると評価できる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、ポルフィリン/フタロシアニンヘテロダイマー酸素架橋2核Fe(III)錯体の酸素還元触媒活性の向上を目指し、反応に要する過電圧を低下させる方法論の構築を検討する。本研究で用いる超分子2核金属錯体は、もう1分子のポルフィリン金属錯体を会合することで、簡便に高次の分子組織に誘導でき、それにより電気化学的特性をチューニングできることを今までに明らかにした。この会合体形成を利用して、この高次会合体による反応活性の向上を図る。 さらに、合成した窒素架橋2核Fe(IV)錯体を用いた、有機分子の酸化反応についても検討する予定である。
|