本年度は、重要伝統的建造物群保存地区などの古い町並みをもった地域における伝統木造住宅の構造的特徴の地域性を把握することを目的として、重要伝統的建造物群保存地区である三重県亀山市関町の現地調査の結果を取り纏めるとともに当該地域の伝統木造住宅の耐震性能評価を行った。これらの結果を纏めた論文が『日本建築学会技術報告集』(全文査読論文)に掲載された。本研究により、得られた主な知見は以下の通りである。1)東西に走る通りに沿って、切妻平入りの町家が建ち並ぶ。間取りは、東側のニワに沿って2~4 室、1~2 列の部屋で構成される場合が多い。また、間口に比して奥行きが深くなっている。2)下記のように、複雑な平面・構造の住宅が多い。i)1 階と2 階の間取りが一致せず、1 階と2 階で柱が通っていない住宅がある。ii)隣接する住宅の柱や屋根などを一体化して、1 棟に改築していると考えられる住宅がある。iii)2 階に、a) 防火目的の2 重壁、b) 直下に柱の存在しない壁、c) 2重床、などが見られる住宅がある。3)住宅の固有振動数は、けた行方向で小さく約2~3Hz である。降伏ベースシア係数もけた行方向で小さく、殆どの住宅で0 .2 以下となっており、総2 階建の住宅では0.1 を大きく下回るものがある。これは、重量がやや大きいこと、1 階に壁が不足していることが理由として考えられる。4)12 棟中4 棟の住宅で蟻害が確認された。床下の柱の平均含水率も概ね20-30% となっており、やや高めの値を示している。 さらに、WCTE(オーストリア)およびWCEE(チリ)にてこれまでの研究成果を発表するとともに、3年間の成果をまとめて博士論文を完成させた。 なお、壁土に関する検討は行わず、2016年4月に発生した熊本地震の被害調査への参加を優先させた。
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