本研究はLHCのATLAS実験において標準理論を超えた新物理の発見を目的としている。当初はヒッグス粒子の精密測定の研究を行っていたが、同時に超対称性理論(SUSY)の直接探索による新物理探索にも注目している。LHCは2015年5月から衝突エネルギーを増強し13 TeVで実験を再開した(Run2)。Run2では新物理探索の感度は飛躍的に上昇する。特にグル―オンの超対称性パートナーであるグルイーノ対生成事象は反応断面積が大きく、Run2での超対称性粒子の発見モードとして重要である。本年度取得したデータ3.2 fb-1を用いて、1レプトン+多数のジェット+横方向損失エネルギーの終状態を用いたグルイーノ探索を行い、1つの信号領域で標準理論の予言値から2シグマの優位度でデータの超過を観測した。非常に興味深い結果で28年度初期には論文として出版予定である。この結果は私が国内研究会、学会で報告した。 またLHCは今後更なる新物理探索領域の拡大を狙い、段階的なルミノシティの増強を計画している。高いルミノシティでの環境下でも良い性能を維持するために新しいミューオン検出器であるマイクロメガスを2019年にATLASに導入すべく開発を進めている。27年度は主に3つの実績をあげた。一つ目はCERNで行ったガンマ線放射線耐性の試験により、マイクロメガス検出器が十分な放射線耐性をもつことを示した。二つ目は本番用検出器の生産の過程の確立を行い、28年度から開始する本番用検出器の大量生産の環境を整えた。3つ目はマイクロメガスの出力を使って効率の良いミューオントリガー信号を作るアルゴリズムの研究を行い、27年度は現実の出力を再現するシミュレーションを構築し、トリガー応答の性能評価に着手した。これらの研究成果に関しては私が国内研究会にて報告した。
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