我が国で資源量が多い針葉樹樹皮の抽出成分の利用のため、樹皮抽出成分の基礎的知見の構築を目的とし、平成27年度は、平成26年度に続いてスギ樹皮抽出成分の重要成分であるフェルギノールの自動酸化反応機構の検討と、ヒノキ、ヒバ(ヒノキアスナロ)の樹皮抽出成分を分析した。 1)フェルギノールの自動酸化反応 フェルギノール酸化反応初期生成物であるデヒドロ体の自動酸化を行ったところ、キノンメチド体生成以降で複数のルートに別れて反応が進行していることが分かった。フェルギノール自動酸化反応で生成された成分のいくつかが確認でき、より詳細な反応機構が推察できた。今後自動酸化反応で確認された成分の詳細な活性能を追うことにより、フェルギノールさらにスギ樹皮抽出物の利用につながることが期待される。 2)ヒノキおよびヒバ(ヒノキアスナロ)の樹皮抽出成分の分析 主要林産資源の針葉樹ヒノキ、ヒバ樹皮抽出成分の成分分析を行った。両種樹皮とも、低極性成分ではジテルペン類の含有量が多く、モノテルペン、セスキテルペン類の含有量は少なかった。ヒノキ樹皮は品種間の成分の違いについて検討できたが、主要成分に大きな違いはなく、フェルギノール類を多く有していた。またヒバ樹皮はジテルペンのトタロールを多く有していたため、トタロールの自動酸化反応を行ったところ、多様な成分に変化した。フェルギノールとトタロールは活性を有する成分として多数の報告があり、これら両種の樹皮抽出成分の利用法を考える上で、フェルギノールとトタロールが重要な成分であることが見出された。
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