研究課題/領域番号 |
14J04206
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
安達 広明 名古屋大学, 生命農学研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
|
キーワード | MAPK / MAPKセンサー / FRET |
研究実績の概要 |
植物独自の免疫システムは、2段階の質的に異なる抵抗反応で構成されるが、共通してMAPKカスケードを介して発揮される。1つのシグナル伝達経路が異なる応答を誘導する要因として、MAPK活性の持続時間の長さや強度の違いが考えられる。病原菌認識後のMAPKの活性動態を調べるには、従来の生化学的解析とは異なり、非破壊的にMAPK活性を評価できる実験系が必要である。本研究では、MAPKの活性動態を可視化するバイオセンサー (MAPKセンサー) を作製し、病原菌が感染した細胞でMAPK活性を時間的・空間的に観察することで、MAPKシグナル伝達機構の分子基盤を構築することを目的とした。 本MAPKセンサーは、MAPKによる基質タンパク質のリン酸化に応答し、2種の隣接した蛍光タンパク質間で蛍光共鳴エネルギー移動 (FRET) が起こるように構成されている。FRET強度には、2種の蛍光タンパク質間の距離と角度が重要であり、リン酸化活性に依存して生体内で理想的な配置をとる構造を模索する必要がある。FRET強度比 (ON/OFF) については、1.3以上であることが実用レベルのセンサーの目安とされる。本研究では1.6のMAPKセンサーが得られていることから、今回作製したMAPKセンサーは植物体内で充分機能するものと判断された。さらに、フォスファターゼに対して感受性であることから、生体内でMAPKの活性減少を反映してFRET蛍光が減衰することも期待される。本MAPKセンサーを一過的に導入したベンサミアナ葉を病原菌由来のエリシタータンパク質で処理したところ、共焦点レーザー顕微鏡下でFRET誘導が確認された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、実用レベルのセンサーの目安とされるFRET強度比 (ON/OFF) が1.3以上であるMAPKセンサーを構築することを目的とした。センサー構造を模索し、FRET強度を評価したところ、病害応答性MAPKの活性化に伴ってFRET強度比が1.6のMAPKセンサーの作製に成功した。したがって、本センサーは非常に良好であると判断される。さらに、フォスファターゼに感受性であることから、MAPKの活性化に伴いONになるだけでなく、フォスファターゼによって再度OFFにもなるものと期待された。本MAPKセンサーを一過的に導入したベンサミアナ葉では、病原菌由来のエリシタータンパク質に応答したFRET蛍光が観察された。以上の結果より、予想を上回る成果が得られており、今後のさらなる発展が期待される。
|
今後の研究の推進方策 |
作製したMAPKセンサーをシロイヌナズナおよびベンサミアナタバコに導入し、モニター植物の作出を試みる。バイオセンサーにシグナルペプチドを付加することによって、任意の細胞小器官で発現させることができると想定される。したがって、本MAPKセンサーに核外輸送シグナルと核局在シグナルをそれぞれ付加することで、核と細胞質基質でMAPK活性の動態をモニターする植物の作出が期待される。また、GFP標識した病原菌を接種し、病原菌の侵入に伴ったMAPKの活性化動態を一生細胞レベルで評価する実験系を構築する予定である。
|