研究実績の概要 |
アリ擬態クモ類の正確な種の認識と種多様性を明らかにするために分類学的研究を行った。フランス国立自然史博物館とイタリアのジェノヴァ私立自然史博物館からタイプ標本を借用し、手元の標本の同定を進めている。ハチグモ科Castoponera属の1新種を新たに認め、論文として提出中である(Yamasaki, T., Hashimoto, Y., Endo, T., Hyodo F. & Itioka, T. A new species of the genus Castoponera (Araneae, Corinnidae) from Sarawak, Borneo, with comparison to a related species. ZooKeys (in review)) アリ擬態クモ類のうち、ツムギアリに擬態している種(M. assimilis、M. plataleoides、M. clavigera)、長い腹柄節をもつTetraponera属のアリ類に擬態している種(M. cornuta、M. sp. A、M. sp. C)、トゲアリに擬態している種(M. maxillosa、M. malayana)を中心に分子系統解析を開始した。
ツムギアリ擬態のM. plataleoides, M. assimilis, M. clavigeraは、形態形質によって区別できる明らかな別種であるが、ツムギアリに形態がよく似ており、ツムギアリの優占する樹上に生息するという特徴を共有している。ミトコンドリアCO1遺伝子の系統解析の結果、このツムギアリ擬態のアリグモ属3種の関係は、非常に強力な擬態モデルであるツムギアリの存在が引き金となり、異なる系統でツムギアリ擬態という形質が進化してきたという示唆を含んでいることが分かった。また長い腹柄節をもつTetraponera属のアリ類に擬態しているM. cornuta、M. sp. C、M.sp. Aやトゲアリ属のアリ類に擬態しているM. maxillosaやM. malayanaでも、同様に、異なる系統で、特定のアリ擬態という形質が進化してきたことを示唆する結果が得られた。
|