研究課題/領域番号 |
14J04247
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
池上 花奈 名古屋大学, 生命農学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 生殖機能 / 視床下部 / キスペプチンニューロン / ギャップ結合 / グリア細胞 / カルシウム測定 |
研究実績の概要 |
哺乳類における卵胞発育の中枢と考えられるキャンディニューロンによる性腺刺激ホルモン放出ホルモン (GnRH) パルス発生メカニズムを解明することを最終目的とし、本年度はキャンディニューロン同士の同期化メカニズムの解明を目指した。そこでグリア細胞およびギャップ結合の関与を検討するため、以下2つの実験を進めた。 1.キャンディニューロン可視化マウスの視床下部を採取し、キャンディニューロンの初代培養系を用い、細胞内カルシウム濃度を測定した後、グリア細胞を免疫組織化学により可視化した。キャンディニューロンおよびグリア細胞における細胞内カルシウム濃度変化を解析した。その結果、NKB受容体作動薬の添加により複数のキャンディニューロンだけでなく、その近傍のグリア細胞でも細胞内カルシウム上昇が亢進しており、かつ同期していた。 2.同実験系を用い、ギャップ結合阻害剤を添加した結果、ギャップ結合阻害剤によってキャンディニューロンにおけるNKB受容体作動薬誘導性のカルシウム上昇が有意に抑制された。また、キャンディニューロン可視化マウスを用い、キャンディニューロンのみを採取し、10細胞由来のcDNAを得た。逆転写PCRによってキャンディニューロンのマーカー遺伝子およびギャップ結合の構成タンパクであるコネキシンの遺伝子の遺伝子発現解析を行った。その結果、キャンディニューロンのマーカー遺伝子 (Kiss1, Tac2, Pdyn) の発現が確認できたサンプル(10細胞/サンプル)のうち、複数のサンプルでコネキシン遺伝子の発現が認められた。 以上の結果より、キャンディニューロンの神経活動は周辺のグリア細胞の活動と同期しており、その同期化にはニューロン-ニューロン間、ニューロン-グリア細胞間のギャップ結合が関与している可能性が示唆された。現在、これらの結果をもとに論文を執筆中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
「卵胞発育を制御するKNDy (キャンディ) ニューロンのパルス発生メカニズム」の解明を目的として、精力的に研究に取組み、マウス胎仔より採取したGFPで可視化したキャンディニューロンの長期培養系を確立し、顕微鏡下において単一の細胞の細胞内カルシウムイオン濃度を連続的に測定することに成功した。この実験系を用い、当初予定していたギャップ結合阻害剤の効果の検証を修了した。また申請時には想定していなかった、グリア細胞もキャンディニューロンの神経活動の同期化に関与していること、キャンディニューロンにギャップ結合構成タンパクであるコネキシンの遺伝子が発現しているという新たな知見を得られた点で当初の計画以上に進展した。一方、当初予定していたダイノルフィン受容体をもつ細胞の同定には至らず、現在進行中である。以上の点より、当初の計画以上に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
ダイノルフィン受容体をもつ細胞の同定に向け、当初予定していたSmartFlare RNA検出プローブを用いた実験系を確立し、生細胞でダイノルフィン受容体を可視化し、細胞を回収し、RT-PCR法によりその細胞を同定する予定である。 また、キャンディニューロン同士の同期化メカニズム解明に向け、当初の予定通り、lucifer yelow等のギャップ結合を通るトレーサーを用い、キャンディニューロンがギャップ結合を形成しているか否かを明らかにする。また、昨年度の成果である、キャンディニューロンにギャップ結合構成タンパクのmRNAが発現していたことより、その免疫組織化学を行い、多くのキャンディニューロンがそのタンパクを持っていたことが確認できた場合は、ギャップ結合遺伝子をキャンディニューロン特異的にノックアウトし、生殖機能に対するギャップ結合の関与を明らかにする予定である。
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