研究課題
哺乳類における性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)パルス発生メカニズムを解明することを最終目的とし、本年度は、脳視床下部の2つの領域に局在するキスペプチンニューロンのうち、どちらの領域のキスペプチンニューロンが卵胞発育中枢、つまりGnRHパルス発生中枢であるかを明らかにするため、以下3つの実験を遂行した。1. 弓状核キスペプチンニューロン特異的なエンハンサー配列を用い、弓状核キスペプチンニューロン特異的にCreリコンビナーゼを発現するマウスをKiss1-floxマウスと交配し、弓状核特異的Kiss1ノックアウトマウスの作出を試みた。現在、膣垢像観察および脳内のKiss1発現領域の解析を行っている。2. タモキシフェン(TM)依存性にKiss1遺伝子をノックアウトできるCreER発現Kiss1-floxマウスを用い、成熟雌マウスの弓状核にTMを投与し、弓状核特異的なKiss1ノックアウトマウスの作出を試みた。その後、膣垢像観察および脳内のKiss1発現領域の確認を行った。TMの投与量および投与領域の検討を重ね、約30匹のマウスにTMを投与した結果、弓状核特異的Kiss1ノックアウトマウスを2匹得ることに成功している。今後はTMの投与量および投与領域の微調整をすることで、より効率的な弓状核特異的Kiss1ノックアウトマウスの作製に取り組み、弓状核に局在するキスペプチンニューロンの卵胞発育に対する役割解明を目指す。3. 全身性Kiss1ノックアウトラットを用い、成熟雌ラットの弓状核にKiss1遺伝子を搭載したアデノ随伴ウイルスを注入し、弓状核特異的なKiss1遺伝子強制発現ラットの作出を計画中である。現在、緑色蛍光タンパクを搭載したアデノ随伴ウイルスを用い、注入実験の条件検討を行っている。また、昨年度までの研究成果をもとに論文を投稿し、現在リバイス中である。
1: 当初の計画以上に進展している
「卵胞発育を制御するKNDy(キャンディ)ニューロンのパルス発生メカニズム」の解明を目的として、精力的に研究に取り組んだ。マウスKNDyニューロンの初代培養系を用い、細胞内Ca濃度をモニターすることで、当初の計画通り、KNDyニューロンの神経活動に対するニューロキニンBが促進的に作用すること、KNDyニューロン同士もしくは周辺のグリア細胞がギャップ結合を介して同期する可能性を示した。現在、これらの結果をまとめ、論文を投稿し、リバイス中である。当初計画していたダイノルフィン受容体をもつ細胞の同定については、他研究グループによる研究が先行しているため、中断することとした。なので今年度は当初計画していなかった、GnRHパルス発生中枢細胞の同定に着手し始め、順調に実験を遂行している。以上の点より、当初の計画以上に進展していると評価した。
これまで、KNDyニューロンにギャップ結合タンパクをコードする遺伝子発現があること、KNDyニューロン同士の同期活動がギャップ結合阻害剤によって抑制されることから、ギャップ結合が重要である可能性を示してきた。今後は、機能的なギャップ結合の存在を確認するために、ギャップ結合を透過するニューロビオチンを単一KNDyニューロンに注入し、KNDyニューロンと周辺のグリア細胞がギャップ結合を形成しているか否かを検証する。また、今年度から着手し始めたGnRHパルス発生中枢細胞の同定のための実験を継続して遂行する。以上、GnRHパルス発生中枢細胞の同定およびGnRHパルス発生メカニズム解明を目指す。
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Neuroendocrinology
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10.1159/000445207