研究課題/領域番号 |
14J04255
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
権平 皓 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | フォトニック結晶 / 光導波路 / 3次元ナノ構造 / 3次元フォトニック結晶 |
研究実績の概要 |
本研究では,導波路や共振器を組み合わせた3次元光回路の実現に向けて,ストライプ積層型3次元フォトニック結晶の開発を行っている.本年度は立体光制御の体系化を目標に,導波路の集積化について検討を行った.特に,3次元フォトニック結晶ににより3次元的な導波路の集積が期待されるため,導波路が立体的に交差している場合についてクロストークの検討を行った. ストライプ積層型3次元フォトニック結晶を構成するロッドを1本抜き取ることにより導入した水平導波路を基礎として,これが立体交差している場合の一方の導波路から他方の導波路へのクロストークを数値解析により計算した.その結果,導波路間の距離を7層程度(1.31 μmに相当)とすることで,クロストークを-25dB以下に抑制できることが分かった.また,周波数依存性を調査したところ,導波路間の距離および周波数に依存したディップが生じることが分かった.このようなクロストークのディップは,導波路の固有モードにおいて空間的なディップが生じてることと対応していると考えられる.そこで,異なる種類の導波路の組み合わせにより,クロストークの周波数依存性を抑制できると考えられ,実際に解析を行ったところ,周波数依存性を抑制しつつ,3層(0.59 μm)離すだけで30dB以下にクロストークを抑制できることを見いだした. 今年度の研究により,3次元フォトニック結晶中に,3次元的に多数の導波路を配置するための,体系的な知見を得ることができた.今後,3次元フォトニック結晶の内部へ構造を導入する際の集積密度の目安を得られることが出来たと考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ストライプ積層型3次元フォトニック結晶において,これまでに,面内方向および層間方向において広帯域の光伝搬が可能な導波路を開発し,これらを連結させることにより,3次元光伝搬動作の実証に成功している.そして,昨年度より検討を進めている導波路の集積性について,さらに発展させるべく,立体的な光集積を考慮した集積密度の検討を行った.本年度の検討により,3次元フォトニック結晶の内部へ構造を導入する際に,適切な構造の集積密度を明らかにすることが出来たと考えられる. 以上の成果について,平成27年度においては,論文発表1編,国際学会2件,国内学会3件の発表を第一著者として行った.そのほか,査読中の論文が1編あり,また上記の導波路の集積性に関する論文を現在執筆中であるなど,研究発表を進めている.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに,3次元フォトニック結晶の内部において,導波路が並列に配置した場合および立体交差した場合の結合特性を明らかし,3次元フォトニック結晶の内部における集積性を体系的に検討してきた.これまでの検討により,3次元フォトニック結晶内部における結合特性は周波数依存性が強いと言うことが分かってきているため,共振器を含めた系の結合特性も同様の周波数依存性が生じていると予想される.そのため,実際に試料を作製した際の作製誤差の影響を抑制するためにも,適切な導波路と共振器の配置を検討していく必要があると考えられる.さらに,共振器の設計そのものにも着目し,実際の試料の有限性を考慮した上でより高い光閉じ込めが得られる構造の検討も進めていくことで,自在な光制御へと繋がると期待できる. また,実験面においても,試料を作製し,これまでの検討を実証していくことが重要と考えられる.3次元フォトニック結晶の内部と外部を適切に接続するためには,入出力効率の向上が重要と考えられるが,これまでの研究成果として得られている導波路端への終端構造導入により高効率な光入出力が得られると期待できるため,実際に3次元立体光制御を実現していくこと目指す. 以上の展開により,光インターコネクションなどへの応用へ向けた,3次元フォトニック結晶による立体光制御の体系化を推し進められると期待できる.
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