研究課題
本研究の目的は,学習者同士が適切な「反論」と「質問」を発言し合い,話し合いの質を相互に高め合うサイクルが発生するような『相互支援型アーギュメンテーション』を実現する教授方略について提案することであった.平成26年度は,以下の研究を実施した.最初に,日本の科学教育関連の文献,及びアーギュメンテーション研究が活発な欧米の文献を網羅的に検討し,『相互支援型アーギュメンテーション』の理論を構築した.次に,1回目の実験授業の実施と分析を行った.1回目の実験授業では,『相互支援型アーギュメンテーション』に必要な「質問」と「反論」のうち,「反論」に焦点を当てた実験授業が実施された.そこでは,デザイン研究と呼ばれる研究手法に基づいて,ビデオカメラによる授業の撮影,ICレコーダーによる児童音声の録音,児童のワークシートやノートの記録といったデータを収集した.収集したデータを多角的に分析した結果,実験授業の前後にかけて,「反論」を発言できた学習者の人数が有意に増加したことが明らかになった.その後,2回目の実験授業の実施と分析を行った.2回目の実験授業では,「質問」の促進に焦点を当てて実験授業がデザインされた.収集したデータを多角的に分析した結果,実験授業の前後にかけて,「質問」を発言できた学習者の人数が有意に増加した.これらの結果から,本研究が考案した「反論」に着目した教授方略,及び「質問」に着目した教授方略の有効性が明らかにされた.平成27年度では,本研究の目的である『相互支援型アーギュメンテーション』を実現するために,「質問」と「反論」の両者を統合した教授方略を考案し,3回目の実験授業を通してその有効性を検証する予定である.
2: おおむね順調に進展している
本研究課題は,おおむね順調に進展していると判断できる.理由は,申請時の研究計画の通り,以下の3点が達成されたからである.1点目は,先行研究の精査と理論の構築である.日本の科学教育関連の文献,及びアーギュメンテーション研究が活発な欧米の文献を網羅的に検討し,『相互支援型アーギュメンテーション』の理論を構築できた.2点目は,1回目の実験授業の実施と評価である.構築した理論を踏まえて,「反論」に着目した教授方略の反映された理科授業を実施し,多角的な分析によって,教授方略の有効性を検証できた.3点目は,2回目の実験授業の実施と評価である.構築した理論を踏まえて,「質問」に着目した教授方略の反映された理科授業を実施し,分析を通して教授方略の有効性を検証できた.
今後の研究の推進方策は,以下の通りである.最初に,1回目の実験授業における「反論」に着目した教授方略と,2回目の実験授業における「質問」に着目した教授方略を統合して,「反論」と「質問」の両者の発言を促進するための教授方略の構築する.その後,構築した教授方略を踏まえて,3回目の実験授業を実施する.そこでは,1回目と2回目の実験授業と同様に,デザイン研究と呼ばれる研究手法に基づいて,ビデオカメラによる授業の撮影,ICレコーダーによる児童音声の録音,児童のワークシートやノートの記録といったデータを収集する.その後,収集したデータを多角的に分析し,『相互支援型アーギュメンテーション』を促進するための教授方略の有効性について検証していく予定である.
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (3件)
Procedia-Social and Behavioral Sciences
巻: 167 ページ: 91-95
理科教育学研究
巻: 55(1) ページ: 3-12