平成27年度は、博士論文の執筆と、沖縄諸島を中心とした実地調査を行った。本儀礼に関する論文や自治体史、歴史的史料を対象とした、文献調査も実施した。 調査成果の一部を論文として執筆し、沖縄文化協会という査読審査のある学会誌に投稿した。査読を受けた結果、研究論文として掲載受理を拝受した。『沖縄文化』120号として、2016年内に刊行される予定である。 本論では、琉球諸島におけるシマクサラシ儀礼の暦日の特徴や地域性の解明を目指した分析を行い、その意味を考えるために、他の年中行事との比較などを行った。その結果、定日、十干、十二支、干支といった地域性があることが分かった。そして、他の年中行事との比較を行った結果、儀礼の暦日の特徴は、本儀礼に限られたものではなく、各地の年中行事の特徴を反映したものと言える。さらに、シマクサラシ儀礼及び他の年中行事の暦日の中に実在しない干支があることが分かった。 沖縄文化協会2015年度公開研究発表会において、「琉球諸島における祭司と仮面神の魔除け」というタイトルで、研究成果の一部の口頭発表を行った(平成27年6月27日)。シマクサラシ儀礼に付随する防除行為とパーントゥの目的、方法、様相、人々の意識などを比較した結果、いくつかの共通点がみられることが判明した。パーントゥという仮面仮装神は、シマクサラシ儀礼に付随する防除行為の一種で、その防除行為が変化した形である可能性が明らかになった。 また、日本民俗学会第67回年会において、「琉球諸島における動物供犠の予備的考察」というタイトルで、研究成果の一部を発表した(平成27年10月11日)。 以上の調査及び分析、口頭発表の分析結果を踏まえて、博士論文(題目「琉球諸島におけるシマクサラシ儀礼の民俗学的研究」)を執筆し、口頭試問、公開審査を経て、学位を取得することができた。
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