研究課題
本年度はin vivo, in vitroの両方向からの解析を行なった。in vivoの解析では私が以前、核内チロシンリン酸化基質として同定したKAP1のノックアウトマウスを用いた解析を行なった。具体的には、造血幹細胞の分化を解析する系を利用して調べた。造血幹細胞の増殖分化においてKAP1はおよびチロシンリン酸化シグナルは重要な役割をもっている。KAP1ノックアウトマウスの造血幹細胞をセルソーターを用いて分取し、野生型のKAP1とチロシンリン酸化されない変異体をレトロウィルスベクターのインフェクションによって発現させ、レシピエントマウスに移植し、その分化増殖への影響を解析した。In vitroの解析では、核内チロシン基質群の中でヒストン修飾に関わる分子として A-kinase anchoring protein 8 (AKAP8) に着目した。AKAP8はクロマチンや核マトリクスに結合し、ヒストン脱アセチル化酵素であるhistone deacetylase 3 (HDAC3) などの分子のリクルートに関わっていることが知られている。昨年度の解析からAKAP8はチロシンキナーゼによってチロシンリン酸化されることで、クロマチンや核マトリクスとの結合が弱められることが示唆された。AKAP8のチロシンリン酸化による機能変化を解析するために、私はAKAP8の中でチロシンリン酸化されるチロシン残基をチロシンリン酸化されないフェニルアラニンに置換した変異体の作製を行なった。複数の部位のチロシンを置換した変異体では結合の変化がキャンセル出来た。このことから、AKAP8の結合の変化は一か所のチロシン残基のリン酸化によって制御されているのではなく、複数の部位のチロシンリン酸化によって制御されていることがわかった。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Journal of Biological Chemistry
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